──知識ゼロからでもわかる同人音楽を、本誌が勝手に選定。聴くまで死ぬな!!
オススメ同人音楽01
いまや同人音楽の最大ジャンル
「東方系」
同人サークル「上海アリス幻樂団」が制作するシューティングゲーム『東方Project』のテーマソングやBGMなどにアレンジを加えたもの。現在の同人音楽界における最大勢力。ゲームの第1作『東方靈異伝 ~ Highly Responsive to Prayers.』が96年に発売されて以降、徐々にその規模を拡大。ニコニコ動画で発表された数々のアレンジ曲が話題となり、一気に人気に火がついた。
代表的なサークルは「IOSYS」「COOL&CREATE」「石鹸屋」など。中でもIOSYSは最も成功した東方系サークルで、そのアレンジCDは一説によると2万5000枚という、同人CDとしては驚異的な売り上げを記録したという。
IOSYS 『東方乙女囃子』 名曲「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」を含む12曲入り。 発売/06年8月 価格/900円
オススメ同人音楽02
爆発的ヒットの女声ボーカルソフト
「初音ミク系」
07年8月にクリプトン・フューチャー・メディアから発売され話題を呼んだ音声合成ソフトウェア「初音ミク」を使用して制作されたもの。女性ボーカルを求めていたDTMユーザーから圧倒的な支持を受け、わずか2カ月で出荷本数が2万3000本を超える大ヒット商品となった。オリジナル、二次創作曲を問わず、幅広く使用されている。
代表サークルは、すでにメジャーデビューしている「supercell」。07年12月にニコニコ動画にアップしたオリジナル楽曲「メルト」が人気を呼び、知名度を上げた。08年6月にアップした「ブラック★ロックシューター」は来春、その世界観を表現したアニメ作品が公開予定。
supercell feat.初音ミク 『supercell』 (ソニーミュージック) supercellのメジャーデビューアルバムにして、初音ミクものとしても名盤。 発売/09年3月 価格/3000円
オススメ同人音楽03
二次創作欲求はヲタクの基本
「アレンジ系」
二次創作のアレンジものは、何も東方系に限った話ではなく、RPGやエロゲー関連は数が多い。代表的なのは、『ファイナルファンタジー』『ロマンシング サ・ガ』など旧スクウェア作品のBGMや『Kanon』『AIR』などのエロゲー、映画『灼眼のシャナ』などのアニメソングを多数手がけている音楽クリエイターチーム「I've」による楽曲群であろう。そのほか、ゲームミュージックをメタル調に変えたり、歌詞を付けて歌ったりと、一発アイディア勝負のものも多い。
東方系を含むアレンジ系には、左の「オリジナル系」に含まれるサークルも多い。二次創作をやりつつオリジナルも制作し、高品質な楽曲を生み出しているわけだ。
Team.ねこかん[猫] 『エアーマンが倒せない』 (Sorrel Records) カプコンのファミコン用ゲーム『ロックマン2』にちなむ二次創作もの。 発売/07年9月 価格/5000円
オススメ同人音楽04
自分でゼロから作っちゃえ
「オリジナル系」
オリジナルとはいっても、アニメ、ゲームなどのヲタクカルチャーからの影響を受けた楽曲が多い。代表サークルは「Sound Horizon」(サンホラ)。語りや歌などでも物語世界を構築するのが特徴で、自らを"幻想楽団"と称しているように、『ファイナルファンタジー』等のRPGゲームからの影響が垣間見える。また、3人揃って"しもちゃみん"と呼ばれる片霧烈火、霜月はるか、茶太なども人気が高い。それぞれ、同人音楽シーンで作詞、作曲、ボーカル、声優としてさまざまなサークルとコラボレートし、知名度を上げた。
現在では、サンホラ、しもちゃみん共に、メジャーシーンで活動している。
Sound Horizon 『Elysion-楽園への前奏曲-』 (ベルウッドレコード) キングレコード系のレーベルからのメジャーデビュー作。 発売/04年10月 価格/2500円
オススメ同人音楽05
プロだって好きなことやりたい
「プロミュージシャン系」
ゲーム作品などでレコード会社と契約をしているにもかかわらず、同人音楽シーンでも活動しているプロのミュージシャンも多い。誰が誰の"正体"なのかは、同人音楽リスナーであればだいたい知ってはいるのだが、当然、レコード会社との契約的には少々微妙な存在であり、メジャーでの名前とは別名義で活動していることが多い。
また、素人の同人であるにもかかわらず、水樹奈々や田村ゆかりなどプロの声優を起用して作品制作を行うサークルもある。もともと声優の拘束単価はそれほど高くはないため、一定のギャラさえ支払えば応じてくれる芸能プロもあるのだ。
少女病 『黎明ローレライ』 プロの声優が参加することも多い、少女病の最新作。少女病は、ランティスよりメジャーデビューが決定した。 発売/09年8月 価格/2100円
オススメ同人音楽06
"それっぽさ"を追求して
その他
01~05の各ジャンルには当てはまらないような同人音楽作品も、多数存在する。例えば、「架空のゲームの音楽」「架空のアニメの音楽」などがそれ。オリジナルではあるが、ヲタクカルチャーに造詣の深い者が聴くと「なんとなくRPGの戦闘シーンっぽい」「なんとなくロボットアニメの主題歌みたい」と感じられてしまうタイプのものだ。
また、「ドラマCD」というジャンルもある。あくまでも制作者自身の声によるオリジナルドラマなのだが、さらにオリジナルの主題歌やオリジナルのBGMまでもがつけられたりもするので、これも同人音楽の範疇ととらえてもいいだろう。
GainGauge 『DIZZY in ass-ault empire』 架空のシューティングゲームのサントラという設定の作品。 発売/08年3月 価格/1500円