ラブプラスのパッケージが写真左。発売/株式会社コナミデジタルエンタテインメント 価格/5800円(税込) 写真右の4枚はプレイ画面例。上段左から、凛子、愛花、寧々の3人である。
──9月3日にKONAMIからニンテンドーDS向けに発売された恋愛シミュレーションゲーム『ラブプラス』。そのキャッチコピーは「国民的G・F(ガールフレンド) デビュー!!」だというが、発売2カ月を経てなおヲタク業界の注目を大いに集めているこのゲームの魅力とは?
『ドラゴンクエスト9』『ファイナルファンタジー13』など一部の人気シリーズが話題を呼ぶものの、全体としてはなんとなく元気がない印象の最近のゲーム業界。事実、ゲーム雑誌の最大手「ファミ通」を出版するエンターブレインは、今年度上半期のゲーム市場規模が前年の同期と比較して10・5%も減少していると報告している。
そんないまひとつパッとしないゲーム業界に事件が起きたのは、今年9月3日。プレイステーション3の廉価版が発売開始されたのと同じこの日に発売されたとあるソフトが、ゲームファンの間で話題騒然となった。
そのソフトのタイトルは『ラブプラス』。大ヒット恋愛コミュニケーションゲーム『ときめきメモリアル』を生み出したKONAMIから、「国民的G・F(ガールフレンド)デビュー!!」のキャッチコピーと共に発売された、ニンテンドーDS用の完全新作恋愛コミュニケーションゲームだ。発売後もゲーム取扱店舗、通販ショップに注文が殺到し、発売から約2カ月が経過した10月29日時点で、累計推定販売本数は14万本を突破(エンターブレイン調べ)。これは、数万本を売り上げれば御の字というこのジャンルのソフトとしては、異例のヒットだといえる。しかも、いまだに品薄状態は解消されておらず、街にはソフトを求めてさまようゲームファンも多いというのだ。
ネット上では、いち早く本作を手に入れたユーザーの熱烈な書き込みが後を絶たず、ついには『ラブプラス』のせいで夫婦の仲が冷えてしまったという報告が寄せられるほどの盛り上がりを見せている。では、現実生活に影響を及ぼすほどの破壊力を持つ『ラブプラス』とは、いったいどのようなゲームなのだろうか?
主人公は、引っ越しで私立十羽野高校に転入してきたばかりの転校生。彼が、同校1年でツンデレキャラの小早川凛子、2年でお嬢様キャラの高嶺愛花、3年でお姉様キャラの姉ヶ崎寧々という、性格の違う3人の女子と出会い、学校生活の中でさまざまな交流を重ねていく──というのが、『ラブプラス』の基本ストーリーで、告白されることが目的だった『ときメモ』などと違い、告白されて恋人同士になってからがゲームの中心である。つまり、世のヲタクにとってはほとんど未経験であろう(?)「高校時代の男女交際」を、リアルに体験できてしまうのだ。
そんな『ラブプラス』の特徴は、以下の通り。
1.現実の時間とのリンク……最初の「友達モード」の時期は違うが、いざ交際が始まって「恋人モード」に入ると、本作は、現実の時間と連動し、実際の日時や四季を反映させてゲームが進行するようになる。もちろん、季節や時間帯に応じて、ヒロインの外見や対応も変化していく。デートの時間も、現実的な時間に設定せねばならない。約束の時間に遅れようものなら、口もきいてくれなくなるあたり、現実の男女交際さながらである。しかし、決してプレーヤーに別れを切り出したりはせず、謝ればちゃんと許してくれるので安心だ。
2.ヒロインの多彩なリアクション……平日は学生生活を彼女と満喫。そして休日はデートを繰り返すというシンプルなシステムの本作。一見単純な内容にも思えるが、一度プレーすれば、ヒロインの膨大なリアクションパターンに驚かされるはずだ。
街を歩けば、手を握るか、あるいはどこかほかの場所に触れるかはプレーヤーの自由。また、彼女の気持ちが高まればキスができるようになるが、これに関しても、どこにキスするかはプレーヤーの自由。それらの行為はすべてタッチペンで行うが、その際のリアクションのリアルさ、多彩さには舌を巻くほどである。
それもそのはず。本作には「だいたい4000くらいの大小のイベント」(KONAMI『ラブプラス』ディレクター・石原明広氏)が存在し、そこに「1キャラ当たり7~8時間分はあるさまざまな声のパターンに対して、ニュアンスごとに600種類くらいある仕草を一個一個組み合わせて当てはめている」(同)のだ。その作業のすべてを制作陣の手作業で行ったというのだから、その執念たるや相当なものである。
さらには、プレーヤーの接し方によって、ヒロインは髪形や性格までも変化させてくる。理想の彼女にカスタマイズすることが可能なのだ。
エンドレスな恋愛……本作の最大の特徴は、「永遠に続く」というシステムである。現実の時間を反映しつつ、半永久的にプレーヤーはモニターの向こうに存在する理想の恋人とイチャイチャし続けることが可能なのだ。しかも先述の通り、決してプレーヤーは彼女から嫌われたりはしない。無限の愛をプレーヤーに与え続けてくれるというわけだ。
「『ラブプラス』とコンビニがあれば生きていける」(KONAMI『ラブプラス』プロデューサー・内田明理氏)というコンセプトは伊達じゃない。胸やけしそうなくらいの蜜月の日々が、永遠に続くのである──。
と、以上が『ラブプラス』の特徴である。
理想的な恋人と、永遠に恋愛を楽しめてしまうという『ラブプラス』。制作者自身も「僕らも『永遠』というのがどういうことなのかが、正直まだわかりません。パンドラの箱をあけてしまったのかもしれない」(同)と語る『ラブプラス』は、恋愛市場から黙殺されきた非モテ男子たちへの福音となるのだろうか?
その実態を探るべく、本誌ではお馴染みのハロプロヲタクライター・エリンギ(Berryz工房・夏焼雅ちゃん推し)が『ラブプラス』を実体験することとなった。「国民的ガールフレンド」は、3次元ヲタクの心さえも捕らえてしまうのだろうか?
(文/有田シュン)