いわゆる業界誌や会員制情報誌といえば、マスコミほどの影響力を持たないが、タブーが少なく小回りが利く分、ピリっとしたスクープを飛ばすことがよくある。その半面、裏社会と連携して"営業"も兼ねた際どい記事を仕掛けることも一部では行われているようだ。
たとえば、企業にスキャンダルネタで揺さぶりをかけ、広告を取る輩もいる。スキャンダルネタは、ライバル企業が裏社会(情報屋やブローカーの場合が多い)に提供するのが一般的。競合相手を攻撃するための材料を、金を払ってまで裏社会に渡すのだ。
裏社会は、これを会員制情報誌や経済誌などの営業部に持ち込む。そうした雑誌の経営者も、裏社会に足を一歩踏み込んでいるような人物が多い。雑誌の営業部は企業側と話し合い、広告が取れたら記事は見送り。もし広告出稿を断られたら、編集部が「スクープ!」と銘打って報道する仕組み。
ある経済誌は、今でこそ企業スキャンダルネタで鳴らす硬派雑誌だが、かつてのオーナーは「特殊株主」として警視庁からマークされていた総会屋。同誌の元編集部員は「せっかく(情報屋から提供されたネタを元に)取材していたのに、急にオーナーから記事をボツにされてガッカリすることがよくありました。『あ、これは広告が入ったな』と半分自分を納得させていましたが」と証言する。
そのほかにも、企業スキャンダルをネタに、まとまった部数の雑誌の購読や高額な企業セミナーへの参加を迫るケースもある。
また、こうした動きに対して、当局がこんな姿勢を取ることもあった。
ある総会屋と深いつながりのある情報誌グループが、電力会社首脳の露骨な女性スキャンダルのキャンペーンを始めたことがある。電力会社は地元の捜査当局に取り締まるようひそかに働き掛けたようだが、当局は連載が終わるまでじっと注視する姿勢を崩さなかった。担当した捜査官は「キャンペーンが不自然な形で打ち切られたら、カネが動いた証拠。そうなれば、会社ごと総会屋への利益供与で挙げることができるんだ」と語っている。
スキャンダル報道に対する企業の姿勢が、新たなスキャンダルを生む可能性もあるのだ。