ヤミ勢力に乗っ取られ、あるいはヤミ勢力と共謀してしまった企業を4タイプに分類!!
ヤミ勢力の"威光"を積極的に利用 [共同利益型]
[代表例]スルガコーポレーション事件
警視庁は08年3月4日、東証2部上場(当時)の不動産会社スルガコーポレーションから依頼を受けてビルの立ち退き交渉をしたとして、山口組系と見られる建設会社「光誉実業」社長らを弁護士法違反(非弁活動)容疑で逮捕した。写真は、事件後に謝罪する同社の岩田一雄会長。
企業と反社会的勢力が、共通の利益のために共謀するタイプ。その典型例が、暴力団の主要な資金源のひとつである立ち退き交渉、すなわち「地上げ」だ。80年代の「土地・株バブル」で猛威を振るったのは周知の通りだが、この事件からは、不動産業界が現在においても、暴力団の「交渉力」を重宝している事実が垣間見える。特に過去数年、スルガをはじめとする新興不動産企業は、90年代末の規制緩和で導入された不動産の流動化・証券化スキームを追い風に急成長。外資から調達した資金で積極的に投資し、争うように物件を開発、短期間で転売して業容を拡大した。
そのビジネスモデルを維持するためには、問題物件の地上げを素早くまとめ上げる暴力団の腕力が必要だったのかもしれない。
豊富な裏人脈で上層部に食い込む [人脈浸透型]
[代表例]カーロ・ファクトリー事件
東京地検特捜部は今年1月28日、東京都渋谷区内の再開発地をめぐる地上げで得た利益を隠し、法人税約18億円を脱税したとして、不動産会社「カーロ・ファクトリー」(現・テールトゥシエル)の元社長・遠藤修を逮捕した。遠藤元社長は暴力団関係者とされる。写真は、事件の舞台となった渋谷区内の再開発地。
反社会的勢力が、その豊富な人脈を駆使して企業幹部などに取り入り、利益を引き出すケース。カーロ事件で遠藤は、03年に東京三菱銀行(当時)などから計約216億円を地上げ資金として引き出していた。暴力団排除が叫ばれる中、巨額の融資を受けられた秘密は、彼の「人脈」にあった。相撲部屋のタニマチだった遠藤はその縁をたどり、東京三菱の幹部に深く食い込んだのだ。
こうした人脈浸透型の典型が「東京佐川急便事件」だ。政界のタニマチとして知られていた同社元社長の渡辺広康は87年、次期総理の最有力候補だった竹下登らの要請を受け、懇意にしていた石井進(稲川会2代目会長)の助力で右翼団体の竹下攻撃(褒め殺し)をやめさせた。その見返りとして、稲川会系企業のために巨額の債務保証を繰り返し行うことになり、特別背任容疑で逮捕された。
経営危機を利用して、経営権を奪取 [乗っ取り型]
[代表例]アドテックス事件
07年2月、警視庁がコンピュータ関連機器メーカー「アドテックス」の元社長・元副社長らを民事再生法違反で逮捕。彼らは、再建スポンサーが決まるまで借金返済が凍結され、取引先の入金だけが続く同法を悪用。会社の資産を詐取していた。写真は、同社が上場したナスダック・ジャパンの売買開始記念式典。
経営危機などに陥った企業に反社会的勢力が近づき、経営権を奪うケース。逮捕されたアド社元副社長・下村好男は元山口組弘道会系組長で、乗っ取り屋として暗躍していた。アド社は、01年に新興市場に上場するも、3年後には赤字決算に転落。粉飾決算に走ったところを下村らにつけ込まれ、経営権を奪われた。下村は、自分が経営する別会社から、不必要な設備を同社に購入させていた。
ITバブル期に新興株式市場に上場したベンチャー企業の中には、業績が落ちてからも、上場時につかんだ莫大なキャッシュが内部留保として残されていた会社もあるが、そうした企業も狙われやすい。典型的なのが、00年3月に日米同時上場を果たし、ITベンチャーの雄と騒がれたクレイフィッシュ。闇の勢力は弱冠27歳の青年創業者を寄ってたかって食い物にし、その資産を奪い取った。
ニセ情報で自社の株価をつり上げる [株価操縦型]
[代表例]梁山泊事件
大阪府警は08年2月、不正な企業買収や株の相場操縦をしたとして、証券取引法(現・金融商品取引法)違反などの容疑で、パチンコ情報提供会社「梁山泊」グループの実質経営者、豊臣春国を逮捕。今年9月、大阪地裁で懲役3年執行猶予5年の有罪判決。写真は、同社への家宅捜索に入る大阪府警の捜査員。
虚偽の情報を流すなどして株価を操作し、利益を引き出すタイプ。豊臣はIT関連会社「アイ・シー・エフ」(現・オーベン)の元社長らと共謀し、自らの広告会社を同社に買収させて利益を得ることを計画。売り上げの水増しなどで広告会社の企業価値を高く見せかけ、アイ・シー・エフの株主らに損害を与えた。ほかにも、情報通信サービス会社「ビーマップ」の株価つり上げを図って仮装売買を繰り返した。こうした「株価操縦型」はライブドア事件にも通じるものであり、株式市場の規制緩和によって、経営基盤の弱いベンチャー企業の安易な上場が続いたことで増加した。
近年、警察と金融当局が監視を強めているが、違法スレスレの手口が横行しており、市場浄化への道のりは遠い。