先の衆院選で308議席を獲得、巨大政党へと変貌を遂げた民主党。この新政権与党が、さっそくスキャンダル報道の洗礼を受けている。大手紙の政治部デスクの話。
「元風俗ライターから自己破産者まで、各層から無理やり人をかき集めて当選させただけに、すねに傷を持つ議員は多い。なかでも、鳩山由紀夫首相自身も見舞われた政治献金スキャンダルは刑事事件に発展しかねないだけに、自民党サイドは情報収集に走ってるよ」
この政治部デスクによると、民主党議員たちは長い野党暮らしの中ではマスコミのスポットライトを浴びることが少なく、ゆえに資金管理の脇も甘くて、専門知識のない秘書たちによるずさんな会計処理が目立つという。
「この弱点を狙い、自民党サイドは政治資金収支報告書の提出先である地方の選挙管理委員会事務局や総務省を訪れ、徹底的に報告書の中身を洗っている。すでに20人を数える民主党議員をあぶり出しているんだ。全国紙の社会部記者へのリークも始めたね」(同)
バッシングの火ぶたを切ったのは、読売新聞だった。9月下旬、長野2区選出の民主党衆院議員、下条みつ氏の元私設秘書2人が、地元の建設会社から給与の支払いを受けていたとすっぱ抜いた。元秘書2人は読売新聞の取材に、それぞれ毎月20万円前後を受け取り、総額は1000万円超と暴露。企業による秘書給与の支払いは政治家への寄付に当たるが、下条議員が代表を務める政党支部の収支報告書にはこれに見合う記載がなく、政治資金規正法に抵触する可能性があると指摘した。
「読売の報道後、元秘書たちが実によくマスコミの取材に応じています。まるで、お膳立てされているのか、意図的なものすら感じました」と地元記者。
下条議員の場合はさらに、元公設秘書2人が国から支給された秘書給与の中から計約170万円を政治団体に寄付していた疑惑も明るみに出た。これは、秘書給与ピンハネ事件で逮捕された社民党の辻元清美衆院議員のケースと似ており、地元の長野地検や長野県警が捜査に乗り出すのではないかと各社とも警戒モードに入っているという。
「実は、長野県警本部長は外務省から出向した創価学会有力メンバー。自公政権を倒した民主党の摘発に意欲を見せているといわれています」(地元記者)というから、ただ事ではないのだ。
このようにマスコミが騒ぎ、捜査当局が連動して動くパターンは、何も今に始まったことではない。昨秋に衆院解散の動きが出てきた直後から自民党サイドは情報収集をスタート。民主党有力議員の出馬取りやめのきっかけになったケースすらあったという。
「岩國哲人氏のことだね。今年1月まで神奈川1区から立候補を予定していたが急きょ取りやめた。なんのことはない、元私設秘書が給与のピンハネを検察に告発したんだ」(前出の政治部デスク)
告発した元私設秘書は、同僚の公設第1秘書が給与から120万円をしぶしぶ寄付していたと証言。国会議員秘書給与法に触れる疑いがあると告発している。検察担当記者は「東京地検特捜部が岩國氏の周辺者から事情を聞いたらしい。それでいわゆる〝肩叩き〟に遭ったと聞いている」というのだ。
下条議員や岩國氏のケースを見ていると、元秘書たち自らが、意外とあっさりと告白している。「かつて自民党が下野した時、野中広務さんが中心になって、連立与党を仕組んだ小沢一郎さんたちのスキャンダルを用意周到に準備して揺さぶり、政権再奪取に成功した。今回も自民党サイドはスキャンダル発掘のために暗躍している」と政治部デスク。
マスコミも巻き込んだスキャンダル合戦の行方を注視したい。
(編集部)