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「死ぬくらいならパンの耳を食べても生きる方がマシ」

いまだに昼間は肉体労働に従事、ECDが自ら示すラッパーのリアル

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伝説的ラッパーECD

 ECD──日本のヒップホップの世界では言わずと知れた伝説的ラッパーであり、地に足のついたDIYスタンスで、ヒップホップというジャンル以外のさまざまなカルチャー・シーンからも注目を集める存在だ。

 そんなECDの新作『天国よりマシなパンの耳』は、"死ぬくらいならパンの耳を食べてでも生きる方がマシ"と、諦念と希望が入り混じり、単純な人生賛歌に収まらない。経済的には苦しいが、生活は充実しているという彼は、今でも昼間の肉体労働と音楽業・文筆業を並行して行っている。

「昼間の給料だと、家賃と光熱費だけしか払えないから、食費もろもろは音楽とか執筆で稼いだ金で賄ってる。どっちかっていうと音楽は、『よかったですよ』って声をかけてもらえるのがうれしくてやってるんじゃないかな」

 ECDの作品の根幹にあるのは、この生々しいリアリティーなのだ。一方で、「反貧困」などの社会運動に対しては違和感もあるという。

「貧困をそこまで敵視すること自体がヤバイ。ロスジェネの人とかは(自分は)派遣で正社員になれないから恋人もできないって言うけど、違うだろって。そこまで国に面倒見てもらったらヤバイでしょ」

 そんなECDだが昨年6月に結婚し、子宝にも恵まれた。結婚後に作風が明るくなるミュージシャンは多いが、ECDの場合はどうなのだろう。

「このアルバムは子どもができるちょっと前に作ってたから、『結婚して円くなった』とか言われるのは癪だなと思ってた部分がある(笑)」

 来年50歳を迎えるECDのパンク・スピリットは、いまだ衰えを知らない。
(二木 信)

ECD
1960年生まれ。ラッパー/作家。日本のヒップホップの黎明期から活動を始め、96年、伝説的イべント「さんピンCAMP」を主催。03年以降、自身のレーベル〈FINAL JUNKY〉から作品をリリース。代表作に『失点 in the park』などがある。

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『天国よりマシなパンの耳』
前作から約1年半ぶり、12枚目のオリジナル・アルバム。「職質やめて!」などの楽曲をはじめ、おなじみのECD節が存分に堪能できる。9月リリース予定。 発売/FINAL JUNKY・P-VINE 定価/2,100円(税込)


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