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政権交代で経済はどうーなる?

政権交代を前に経産省と財務省が激闘中!! 09年版"官僚たちの夏"

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「財務省には負けたくない!!」経産省。

昨秋以降の世界同時不況で、日本経済は激しく落ち込んでいる。しかし、それとは裏腹に、"イケイケ"の中央官庁がひとつある。

いま、"霞が関の暴れん坊"との異名さえ取っている経済産業省(以下、経産省)だ。

政府肝いりの景気対策として、エコポイントとエコカー減税を導入したのを皮切りに、この不況で業績不振に陥った企業を公的資金を使って助ける「改正産業活力再生特別措置法(産業再生法)」を成立させ、さらには、不況下でも成長が見込まれる企業に投資する官製ファンド「産業革新機構」を発足、「大規模な経済対応が出てきたと思えば、大体どれにも経産省が絡んでいる」(全国紙経済部デスク)という状態なのである。

挙げ句の果てには、新型プリウスのあまりの人気にトヨタ自動車が受注をさばききれず、エコカー減税の利用期限が切れても受注分を購入者に納車できない事態になったことに対し、同省の望月晴文事務次官が「供給を努力しろ!」と発言。これは、「わざわざウチが作った制度なんだから、絶対に利用しろ」と言わんばかりの異例発言であり、産業政策に詳しい全国紙経済部記者は、「省内を歩いていても、『今こそウチが活躍するときだ!』という鼻息の荒さが暑苦しいほど(笑)。今回の不況を逆手に取って、一気に省益を拡大させることに成功している」と指摘する。

MEMO官僚たちの夏
1975年に新潮社より発売された、城山三郎の小説。これを原作に、96年にNHKで、今年7月からはTBSでテレビドラマ化されている。原作では、高度経済成長期を支えた通産官僚たちの奮闘ぶりが描かれるが、その後継官庁・経産省の今はというと……。

「経産省は、TBSの話題ドラマ『官僚たちの夏』で描かれているように、高度成長期には産業政策を次々に成功させ、『打倒・大蔵省!』をスローガンに霞が関での序列1位を争った。しかし、バブル崩壊で国内メーカーが落ち込むのと軌を一にして、経産省の存在も埋没。そこで今回の世界同時不況を"復活"のチャンスととらえ、自前の政策を次々と実現している。その代表例が産業再生法であり、これまでは多くの天下りを送り込むなど財務省の影響力が強かった政策投資銀行(以下、政投銀)を通じて民間企業に公的資金を入れるというスキームを作ることで、ちゃっかりと同行を影響下に置くことに成功した。省内では『久々に財務省の鼻を明かした』との歓喜の声も聞きます」(同)

国民不在のまま続く熱すぎる『官僚たちの夏』

しかし、経産省の独走を前に、"中央省庁の総本山"財務省も黙ってはいない。7月、同省の肝いりで、業績が悪化している企業に対して政投銀と民間金融機関が5対5の"折半"で融資するという緊急融資制度を創設。この制度によって「経産省の影響力が増していた政投銀を、自陣に取り込む」(同前)ことを狙っているといい、財務省と経産省の省益確保をめぐるバトルは激しさを増しているのだ。しかし、そのバトルが国民生活にとってプラスに働いているかというと……。

「財務省の折半融資制度は、産業再生法に基づく経産省の公的資金融資と内容がかなり重複していて、効果は疑わしい限りです。そもそも、産業再生法の制定当初は、確かに金融市場が混乱していたため、企業は資金繰りに困っていた。しかし今は金融市場も正常化しており、民間金融機関が普通に融資を再開している。財務省の制度は、屋上屋を架すどころか、雨がやんだのに今更屋根を作っているようなもので、典型的なお役所仕事ですね(笑)。政投銀の知り合いは、『産業再生法に対応するだけでも徹夜続きなのに、折半出資制度の対応もしなきゃいけなくなって、いつ寝ればいいんだ……』とボヤいてましたよ」(金融業界関係者)

経産省vs財務省のバトルが過熱している背景には、民主党への政権交代が確実という事情も強く影響している。

同党は「官僚から政治を取り戻す!」を合言葉にしており、政権奪取後、省庁の"既得権益"に対してさまざまなプレッシャーをかけてくることは必至だ。これに対して省庁サイドには、「今のうちに体制を整えておかないと、民主党の攻勢に耐えることができなくなる」(霞が関関係者)という危機感がある。さらに自民党も、少しでも選挙戦を有利に進めるために役所側の要望を積極的に聞き入れていて、法案作成や天下りなどの"駆け込み要求"をなんでも受け入れている。混迷する政治事情が、政権交代前の〝駆け込み省益拡大〟を後押しする要因になっているわけだ。

とりわけ財務省が危機感を抱いているのは、民主党が同省に対し「官僚制度の象徴」として苛烈な攻撃を仕掛けてくることが想像に難くないから。折しも現在の同省トップは、小泉政権下で秘書官を務めた丹呉泰健事務次官で、自民党と近い官僚の代表格。民主党の鳩山由紀夫代表はすでに、「政権を取った際には国家戦略局を新設し、予算の骨格を決める」と丹呉事務次官に言い渡し、これまでの同省主導による予算編成体制を根本から改めることを通告している。実際、年末に2010年度の予算編成作業が進むにつれ、民主党と財務省との亀裂が決定的になっていくことは間違いないと見られているのだ。

このような動きを財務省凋落の好機ととらえ、民主党政権に移行後、経産省がさらに影響力を増すことも考えられる。実際、「これが財務省の上に上がるための最後のチャンス」(霞が関関係者)として、経産省がエコポイントや産業再生法に続く二の矢三の矢を放つ準備を着々と進めているとの声も。

「政権交代前後には、財務省と経産省だけでなく、霞が関のありとあらゆる省庁が、組織防衛のためにありとあらゆる手段を打ってくる。むしろ"焼け太り"になることもないわけではない」(前出・全国紙経済部デスク)

ドラマ『官僚たちの夏』では、敗戦後の日本を少しでも豊かにしようと奮闘する役人の姿が描かれている。しかし平成版「官僚たちの夏」では、省益の維持のみをかけた、国民不在の熱い戦いが繰り広げられているようだ。そんなことやってたら、それこそ民主党に揚げ足を取られてしまうことになりかねない気もするが……。
(千代田文矢)

財務省の「民主政権対策」

本文中に登場した全国紙経済部デスクは、「財務省は、民主党との対立が決定的なものになって丹呉事務次官が更迭されるという最悪のケースさえ、すでに織り込んでいる」と指摘する。
「財務省は7月に丹呉さんが事務次官になった際に、ナンバー2の官房長として勝栄二郎・前主計局長を昇格させている。勝さんは、非自民連立政権の細川・羽田政権で官房長官秘書官を務めている。当時の官房副長官は鳩山由紀夫さんで、勝さんと現民主党幹部とのパイプはいまだに太いと見られる。勝さんはかねてから事務次官候補として名高く、今回も丹呉さんでなく勝さんが事務次官に昇格するという話も出ていた。あえてそうしなかったのは、民主党から無理難題を押しつけられた際には丹呉さんに詰め腹を切らせ、切り札として勝さんを昇格させるシナリオを用意しているからではないか……」(同)

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