出で立ちが激シブ。(撮影/有高唯之)↑画像をクリックすると拡大します
舞踏家として活躍する一方、『ツィゴイネルワイゼン』『どついたるねん』『キル・ビルVol.1』ほか、さまざまな映像作品で、短い出番ながら圧倒的な存在感を放つ怪優・麿赤兒。1981年生まれの新人・内藤隆嗣監督のハードボイルドコメディ『不灯港』では、漁村唯一のオシャレショップの店長として、うさん臭い魅力を発散させている。
「映像のときは、自分で自分のことを"スパイシー麿"と呼んどります。役者をどう生かすかは監督次第。少ない出番でも、作品のスパイスになれればってことですな。ギャラも、松竹梅といろいろで、梅以下の場合も多い。園子温が若手の頃は、出演したボクが逆にカンパしてたぐらいです(笑)」
園子温、SABU、坂口拓、そして内藤隆嗣と、評価が定まる以前の新進監督とのコラボも目立つ。
「完成した『不灯港』を観たけど、主人公は漁師なのにキザな台詞を言う奇妙な映画だな。笑っていいのか、マジメなシーンなのか悩んじゃったよ(苦笑)。でも、新しい才能が出て来るときって、すぐには評価されないもの。内藤監督は若いこともあって、自分のイメージをいろいろ作品に詰め込んだんだろうけど、映像作品は削っていくことも大事。そこらへんは、まだ考える余地があるんじゃないかな。でも、それだけ今後伸びる可能性があるってこと
だ。素晴らしいことだよ」
"男の美学"をモチーフにした『不灯港』だが、麿流"美学"とはどのようなものだろうか。
「ボクらの世代は、汗臭いとか男臭いとか、"臭さ"が一種の男らしさ、かっこよさだった。今は草食系とかがもてはやされているらしいけど、そういう流行語はボクはあまり気にしない。格差社会とかも言われているみたいだけど、格差なんて大昔からあるもの。若者を集めて舞踏やってるせいで、お金は全然たまらないけど、舞台の上ではあらゆるものから自由になれるんだよ。ま、それ以外はな〜んもないんだけどな(笑)」
体ひとつで生きる"男の美学"、しかと拝聴しました。
(長野辰次)
まろ・あかじ
1943年、奈良県生まれ。早稲田大学中退後、状況劇場設立に参加。72年に舞踏集団「大駱駝艦」を旗揚げ。この世に生まれてきたことこそが大いなる才能であるという"天賦典式"を掲げ、国際的に活躍。10月にはシアタートラム(東京都世田谷区)にて新作「G.は行く」舞踏公演を予定している。
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映画『不灯港』
漁師の万造は無口だが、一輪の赤いバラを愛するダンディーな男。そんな彼の前にミステリアスな女が現れる。ロッテルダム国際映画祭で"日本のアキ・カウリスマキ"と評された新人・内藤監督の哀愁漂うコメディ。監督・脚本/内藤隆嗣 出演/小手伸也、宮本裕子、広岡和樹、ダイアモンド ユカイ、麿赤兒 配給/クロックワークス 7月18日より渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー