社員カットや経費削減、不採算事業の整理などの、大胆なリストラの成果で、09年3月期は、前期に比べて、赤字幅が減少。
──今回は、〈ヤバそう〉と言われている会社の代表として「ぴあ」の社員に集まっていただき、内情を聞きたいと思います。1年前に全社員の約3分の1に当たる90~100人の早期退職を募集して話題になりましたが。
A(社歴14年) 実はあれ、僕も応募したんですが、蹴られました。低姿勢に「ご応募よろしくお願いいたします」なんて言っておきながら、「あなたには業務を継続していただくことになりました」という紙っぺら1枚で(苦笑)。
B(社歴10年) この時だけじゃなく、その前後も、とにかく辞める人は絶えないよね。役員も結構辞めたし。
C(社歴5年) 私たち契約社員は今春から給料5%カットになったんだけど、通達されたのが契約更新の直前で。
B 経費削減もすごい。一応、徹夜したらタクシーを使ってもいいことにはなってるんだけど、その場合は事前申請が必要なんですよ。そんなの前もってわかるわけないのに。結局、自腹。
──ちなみに、リストラの背景としては、その4カ月前(08年1月)のシステムトラブルが挙げられてましたよね。あれでチケット販売が激減して、昨年3月期の連結決算で最終損失が25億円に陥った、と。
ぴあ株式会社
1974年設立。チケット事業、情報サービス事業、出版事業が3本柱だが、どの事業もネットの普及や他社の参入に押されて苦戦中とも。東証1部上場企業。
A あれは、ぴあが抱えていた問題が表面化しただけ。昔から、各部署間の仲が悪くて。で、全社的なシステム刷新という時に「こういう問題について決めます」と議題が上がっても、みんな自分のところの利益しか考えない。
B 全社、もしくは部署内にあまねく伝えるべきことでも、それが伝わるのは、決まった後。そういうのって、やっぱり士気が低下しますよ。
C それで辞める人が多いんだけど、結構入ってくる人も多い。なのに、引き継ぎがちゃんとなされない。
B 仕入れ側(営業)と媒体側(メディア)のコミュニケーションは相変わらず最悪だしね。営業は、勝手に案件を取ってきて、無理やりぶん投げる。
A きちんと仕切れる人がいないよね。だから僕は、あの早期退職のとき、"これはぴあが変われる、またとない機会だ"と思ったんですよ。どこまで無駄を切り落とせるか、と。ところが、フタを開けてみたら、できる人がいなくなり、なんでこいつが切られないの?っていう人が残った。その残る・残らないの判断も、結局、矢内廣社長のイエスマンで、次期社長候補との噂がある役員が下したらしくて。ちなみに、その人、社員の評判はよくないけど、社長には、平気で泣き落としで訴えたりするって噂(笑)。
B 社長は体育会的で、そういうのに弱い(笑)。時代はどんどん変わってるのに、言ってることが、今と10年前とでちっとも変わってない。
A なのに、ぴあのアイデンティティはどんどん失いつつある。というのも、今、チケットビジネスできちんと利益を上げてるのって、「e+(イープラス)」(エンタテインメントプラスが運営)くらいじゃないですか。e+は、すごく小さな、個人的な興行のチケット販売にも対応している。僕はあれは、ぴあがやらなきゃいけないことだったと思ってるんですよ。でも、電子チケット事業部に話しても、危機意識がまったくない。
B 本業のチケット販売がヤバイのは確か。最近「東方神起」のチケットがバカ売れしてるけど、チケットの入手方法を郵送のみにして、郵送手数料を取るというセコい手に出ている。
C 常に本業の改善策は取られてはいるんだけど、たとえば、よそから優秀な人を引っ張ってきたりしても、その人たちをうまく配置できていない。能力が生かされないまま、不満を感じて辞めていく。そういう状況はまだ続くでしょうね。
A いい転職先さえ見つかれば、自分はすぐに辞めますよ。
B、C 同感(苦笑)。