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第1特集
専門家が名指しする生き残るor死ぬ会社【放送業界】

必要なのは制作のモチベーション? やっぱり"フジと日テレが強い"ワケ

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「実は、変化は1990年代後半に始まっていました。調べてみると、ジャニーズ事務所所属タレントの出演率が圧倒的に上がるのが90年代後半です。つまり、テレビは面白いというイメージを背景に、テレビ局がかつてのように実験的な番組を作るリスクを負えなくなり、確実に当たる番組を狙うようになったわけです。こうなるとコンテンツの同質化が起こり、視聴者は離れていきます。2000年代前半まではそれでよかったのですが、06年頃から広告費が落ち始め、お尻に火がつきました」

 こう語るのは、『テレビ進化論』(講談社)の著者で、メディア全般に詳しい境真良氏。2011年には、地上デジタル放送への完全移行を控えているテレビ各局。現段階ではまだ明確な形は見えてこないが、ネットコンテンツは依然として進化し、IPテレビなどをベースとした多チャンネル化も進むと予測されている。そうなると、一部の民放キー局に広告費が集中する状況は生まれにくくなり、各局はより激しい競争を強いられる。

 そんな中、境氏は「今後は、コンテンツ制作能力がより重要となる」と語る。

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「私自身は、テレビ局のコンテンツ制作能力は非常に高いと思っています。ネットを賑わせているUGC(user-generated contents)はテレビの二次創作物が多いことが何よりの証拠です。しかし産業としてのテレビ界が衰退する中で、制作費の単価が落ち、コンテンツのクオリティは下がっていく可能性がある。そこで、コンテンツが生み出した価値をどれだけ金銭的に回収できるか、そしてどれだけコンテンツ制作能力を保つことができるか。経営資源をコンテンツ制作に集中することも必要です」(同)

 境氏は、今後のシナリオとして、通信系企業を軸とする業界の再編、あるいは有力なテレビ局が制作会社を買収するケースもありうる、とした。

 そこで、勝ち残るテレビ局はどこか。各局の制作事情に詳しい放送関係者が語る。

「コンテンツ制作力において圧倒的に強いのはフジテレビです。『お台場冒険王』に象徴されるように、放送以外のコンテンツ展開にも実績があり、配信系コンテンツも安定感があります。その後を追うのが日本テレビですが、フジテレビの後手に回っている印象ですね」

MEMOテレビ界が激震に見舞われている。視聴率の低落傾向に加え、広告収入の激減で、多くのテレビ局が赤字決算を計上。さらには、地上デジタル放送への移行、多チャンネル時代への適応など、多くの難題を抱えるテレビ局に、明るい未来はあるのか?

 他方、厳しい評価を下されたのが、TBS、テレビ東京、テレビ朝日だ。

「TBSは自社を放送会社と制作会社に切り分けました。その後、体制はまた見直されましたが、その内情を見れば制作スタッフの給料を引き下げる傾向は明白です。今後、放送会社としての特権性が薄れていくことを考えると、この方針は間違いでしょう。一方、テレビ東京とテレビ朝日は自らを流通会社と位置づけ、他社に比べ外注制作のコンテンツを増やすことで地位を保ってきましたが、これは流通の手段がブロードバンドになったとき、競合が生まれやすいビジネスモデルです。今後に向け、社内クリエイターがどれだけ育っているかに不安が残ります」(同)

 放送免許に守られた寡占的なビジネスモデルが終わり、新たな競争時代が始まろうとしている。
(神谷弘一/blueprint)


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