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世襲批判というパフォーマンスと小泉Jr.自民公認の既定路線

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MEMO世襲批判
地盤(後援会)、看板(知名度)、カバン(選挙資金)の3バンを受け継いだ、国会議員の世襲批判が世論の注目を集めている。これにより、次選挙では世襲議員の公認を制限するマニフェストを与野党とも掲げる方向で進めていたが、自民党は早くも見送ることになった。

「中川(秀直)さんも武部(勤)さんも最近まで『息子に継がせる』って言ってたけどねぇ」

 あるベテラン代議士の妻は首をかしげる――。

 強気な世襲批判を口にする両氏を筆頭に、永田町で「世襲制限」論争が喧しい。だがこの議論、何も今に始まったものではない。「私が初めて選挙に出た時も世襲批判を受けた」と小泉純一郎元総理が口にしたように、何十年も前から続いているものだ。民主党内では、野田佳彦ら若手が盛んに議論を進めてきたが、小沢一郎、鳩山由紀夫ら幹部連中が世襲議員のために、くすぶっていた。だが、安倍晋三、福田康夫両総理の放り出し辞任が続き、麻生内閣の7割の閣僚が世襲議員、あげくに改革の申し子のような小泉氏が次男の進次郎氏に継がせたものだから民主党が一気に世襲禁止の音頭を取った。

 企業経営では「三代目で潰れる」と世襲の弊害が言われるものの、国会議員の場合、毎回選挙の洗礼があり、実際選挙に弱い世襲議員もいなくはない。何もここまで批判されることなのか?

「安倍、福田のような、国会議員にすらなりたくなかった人間を総理にしてしまった自民党が悪いね。世襲といっても、影響力があるのはせいぜい選挙区内だけの話だけど、2人の場合、親が派閥領袖で中央での力もあった。三世の小泉氏、二世の小沢氏とそこが違うはずなのに、『世襲=頼りない』の構図を作ってしまった(苦笑)」(自民党議員ベテラン秘書)

 続く麻生総理も、吉田茂の孫で、父・太賀吉の地盤を継いだ世襲議員の典型とされるが、太賀吉の議員辞職後、20年以上たって立候補しており、一度は落選を経験している。これまでの失言、軽さは、麻生財閥の御曹司であることに原因があるのだろうに「だから世襲議員はダメだ」になってしまう。ある三世議員が嘆く。

「確かに先代の後援会のバックアップで初当選させてもらったけど、高齢化が進んでいるから、後援者を新たに掘り起こす努力は欠かせない。国会活動も真面目に頑張っているのに、マスコミに世襲議員というだけで批判され、今やマイナス要因でしかないよ」

 ほかでは「先代と選挙区が変わったから」(鳩山兄弟)、「初出馬の時、金の援助はゼロだった」(二期生議員)など、いかに自身が実質的な世襲でないかをアピールするのに必死だ。

「今回、自民党は土壇場で世襲制限を見送ったけど、その背景には小泉進次郎の存在が大きい。世襲に該当する新人はほかに臼井正一氏だけで、いくら後援会の反発があるとはいえ、たかだか2人だから制限もできた。しかし、無所属でも当確必至の進次郎に自民党は対抗馬を立てられず、結果、『新たな人材を発掘する』という世襲制限の趣旨に反して、反発を買ってしまう。一方、民主党で該当しそうだったのは石井一参院議員の息子・登志郎氏くらい。前回選挙から一氏の地盤とは別の選挙区から出ていて、解決済みだったから、悩む必要はなかった」(政治部記者)

 要は「言ったもの勝ち」なわけだが、そのパフォーマンスに便乗しているのが、冒頭の中川、武部の両元幹事長。中川氏にいたっては、雑誌や新聞で世襲批判の父子対談をするなど徹底している。

「中川氏は俊直氏、武部氏は新氏という息子を秘書にし、地元でも後継者として活動させてきた。どの口が世襲批判をしてるんだと言いたいね。方針転換の理由は、自身の選挙のため以外、
何ものでもない。今のままだと2人とも落選する可能性が高いし、党内の求心力も下がる一方。ここで一発目立っておこうというわけ(苦笑)。2人ともあと2〜3期は国会議員をやるつもりだから、息子が継ぐ頃には政権も選挙制度も混沌として、この議論自体、忘れ去られているよ」(自民党議員)

 結局、今回の世襲批判もこれまで通り"のど元過ぎれば......"という算段なのだろう。
(松井 勉)


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