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第1特集
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元刑務官・坂本敏夫氏インタビュー「死刑囚の処遇は、大きな負担だった」

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──まず、刑務官として27年間、無期懲役受刑者や死刑囚と接して、強く感じたことは?

坂本敏夫(以下、) 「無期懲役受刑者や死刑囚といっても、普通の人間だ」ということです。もちろん、初めのうちは演技で接してくる人もいますが、信頼関係ができてくると、ちゃんとこちらの言葉が通じるようになります。命の尊さや被害者の話に共感して、涙するようにもなるし、直接処遇に当たる現場の刑務官とも、家族のような関係になる。逆に、彼らと触れ合うことのない所長はじめ幹部刑務官にとって、受刑者や死刑囚は虫けらのような存在でしかない。そこに大きなギャップがありました。

──無期懲役受刑者や死刑囚のほうがコストがかかる、ということはない?

業務コストからいえば、むしろ、2~3年の短期刑受刑者よりも、無期懲役受刑者のほうがよほど扱いやすい。真面目に務めなければ仮釈放という希望がさらに遠のくということもあるし、時間をかけてじっくり向き合えますから。ただ、待つのは「死」だけの死刑囚の処遇を担当するのは、大きな負担です。こちらも心身ともに潰されそうになり、3年と続けられませんよ。

──では、コストを削減できるという、PFI方式(官民共同運営)の刑務所(社会復帰促進センター)をどう見ますか?

コストを抑えられているとは思えません。というのも、職員の人件費や受刑者の収容費など、運営にかかるすべての費用は、国の負担です。民間企業は、リスクを伴わずに、刑務作業の企画や経営、作業収入による利潤の追求といった経済活動を行えるのです。国民の税金で民間企業を太らせる、という一面は否定できません。

 また、すべての刑務所でいえることですが、この不況で、肝心の刑務作業そのものがないのが現状です。かつて、受刑者1人当たりの刑務作業収入(国庫に収める歳入)は、バブル崩壊時点でも年間約70万円でしたが、現在は年間20万円以下。PFI刑務所はそれ以下です。

──刑務官の目で見たとき、「仮釈放のない終身刑」はコスト的に導入可能だと思いますか?

大変なお金がかかります。終身刑受刑者を一般の受刑者と一緒に処遇することはできないので、終身刑収容区域または独立した刑務所が必要になるでしょう。1000人収容の施設をひとつ建設するのに100億円。人件費は、職員数300人、平均年俸600万円で年間18億円。さらに、受刑者1人当たりの年間収容費は50万円ですが、がんなどの重篤な病気にかかれば、医療費で1人100万円や200万円はすぐに飛んでいきます。終身刑の導入は、現実的でないと思いますね。

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坂本敏夫(さかもと・としお)
1947生まれ。元広島拘置所総務部長。ノンフィクション作家。67年に大阪刑務所看守となり、以後、東京拘置所、黒羽刑務所等の幹部刑務官を歴任。94年に広島拘置所で退官。現在は執筆活動のほか、刑務指導アドバイザー兼役者として、映画やドラマの仕事もこなす。著書に、『元刑務官が明かす死刑のすべて』(文春文庫、06年)ほか多数。


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