惚れ惚れするほどクールなお方です。(撮影/有高唯之)
↑画像をクリックすると拡大します"江口のりこ様"と書かれた控え室のドアをノックしようとすると、ふいに「どうも」と声を掛けられた。振り向くと、本人がすでに横に立っていた。映画やテレビドラマで独特の存在感を見せている女優らしい、"ひょっこり"とした現れ方だ。『時効警察』(テレビ朝日系)でのサネイエのような隠し味的キャラで重宝がられる一方、タナダユキ監督の『月とチェリー』(04年)などの主演作もある。女性の枠から飛び出した個性的なヒロインたちが登場するオムニバス映画『非女子図鑑』では、『混浴heaven』に主演。主演と助演で、意識は違うものだろうか?
「変わんないですね。主演だからやってやろうとか、出番が少ないから目立ってやろうとか考えないです。今回は2日間ぶっ続けの撮影というタイトなスケジュールで、寝る暇もなく露天風呂にほとんど浸かりっ放しでした。現場のこと、よく覚えてないんですよ。だいたい『"非女子"ってなんなの?』と。私、××系とかジャンル分けされるのも、するのも嫌いなんです。人それぞれでいいじゃないですか。まぁ、タイトルだからいいんですけど」
なんともサバサバした口調。映画プロデューサーが、"非女子"に選んだ気持ちがわかるというもの。所属劇団「東京乾電池」の大先輩・綾田俊樹との共演だが、現場では気を使った?
「綾田さんは、気のいい親戚のオッチャンみたいな人。気を使わなくていい、油断できる先輩なんです(笑)。今回、楽しく仕事できたのは、共演の皆さんのおかげ。プライベートでも仕事でも、気の合わない人と一緒にいるのはイヤじゃないですか。演技してても、どっか嘘をつくのが嫌いな自分がいて、その時の感情がすぐ顔に出ちゃうんですよね」
本誌と同じく、彼女もキャリア10年目を迎えた。
「10年前に上京して、乾電池の研究所に入ったんです。それまでが退屈な毎日だったんで、うれしくて仕方なかった。この仕事を続けて、これでも成長したと思いますよ。芝居ができるのは、共演者やスタッフがいるからだと思うようになりましたもん。この仕事に就いてなかったら、泥棒にでもなって、何か違う形で爆発してたんじゃないですか」
カメラに向かって、つくり笑いをすることもないが、靴を脱いでブランコに乗った瞬間だけ柔らかい顔を見せた。クールな表情をほどいて見せた彼女に、思わず目が釘付けとなった。
(長野辰次)えぐち・のりこ
1980年、兵庫県生まれ。02年の映画『桃源郷の人々』(三池崇史監督) でデビュー以来、出演映画が約60本。『インスタント沼』(5月23日公開)、『いけちゃんとぼく』(6月20日公開)ほか公開待機作品多数。現在放送中の『アタシんちの男子』(フジテレビ系)や舞台『ゼブラ』(6月9~29日、シアタークリエ)など、ドラマや舞台でも個性を発揮している。『非女子図鑑』
世間の目を気にせず、自分の気持ちに正直に生きる6人の"非女子"を主人公にした、ショートムービー集。オープニングでは、鳥居みゆきがイブ役を怪演。江口のりこは『混浴heaven』で、入浴マナーに厳格な露天風呂マニアを演じている。
主演/鳥居みゆき、足立梨花、山崎真実、月船さらら、片桐はいり、江口のりこ、仲里依紗 配給/ニューシネマワークショップ、グアパ・グアポ 5月30日より、渋谷シアターTSUTAYAほか全国順次公開 公式HP〈http://hijoshi.com〉
(C)「非女子図鑑」製作委員会