――なんだかいまいち外側からは実態が見えにくい自衛隊。それは当事者たる彼らからしてみても悩みの種ではあるらしく、数年前から防衛省は「開かれた自衛隊」を目指しているという。その一環として07年に生まれた雑誌が、「MAMOR」(扶桑社)だ。とはいえ、出版業界と自衛隊なんて、本来なら積極的に交わることのない世界だったはず......。編集長の高久氏に、自衛隊という組織はどう見えているのか!?――
僕自身、「MAMOR」を作るようになるまでは自衛隊に興味もなかったですし、友人に「自衛隊の雑誌を作る」というと驚かれました。でも実際に取材して「自衛隊って、やるじゃん」って、僕は思った。確かに不祥事があったりはするのだけど、そんなのは25万人いるうちのほんのわずかで、ほかは本当に立派な人たちだと感じたんです。
自衛隊は、メディアでは、不祥事などばかりクローズアップされます。しかし、普段彼らがどのような意識でどんな仕事をしているのかは、あまり知られていないですよね。それを伝える意義というのは、決して少なくないと考えています。戦後日本の教育を経て、日本の社会・文化というのは、やはり"左"寄りのものになっていたと思います。国防というものについて語ること自体がタブー視されるような風潮が長くあったし、今もあるのではないでしょうか?
それに、自衛隊の人たちは志が高いんですよ。イラク派遣の話が出たとき、僕は「あんな死ぬかもしれないとこ、本当はみんな行きたくないんだろうな」って思っていた。でも実際は応募者が殺到して、行けない人たちが悔しがっている声を聞きました。彼らは日々の訓練の成果を発揮したいんです。骨の髄まで、困っている人のために働きたいというメンタリティがあるんですよ。目からウロコでしたね。
自衛隊って、日本人の「残された聖域」なんですよ。あそこは、内部にひとつの完結した社会を持っていて、一般社会とは教育も違うし文化も違う。古き良き日本の価値観が、そこに残っているんですね。具体的に言ってしまえば「挨拶をきちんとする」とか「目上の人を敬う」とかっていうことで、別に特別なことではないんですが。それでいて性格はシャイで不器用、というような、そんな"原日本人像"が実際にあるんです。私たち編集部の人間も、一緒に取材に行くライターやカメラマンも、そんな彼らの姿に感動して自衛隊のファンになってしまうくらい。だから「MAMOR」という雑誌は、私はもちろんスタッフ一同が、自衛隊の人たちがどれだけ頑張っているかに感動して作っているようなものなんです。
(高久裕編集長・談)