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──昨年11月に行われた10周年記念ライブ「(生)林檎博'08〜10周年記念祭〜」。10年来彼女を見続けてきた4人が、その様子を収めたDVD「Ringo EXPO 08」(今年3月発売)をレビュー。はたしてそれぞれの目に、彼女はどんな変化を遂げたように見えるのだろうか?
「ギミックの天才が 大衆の生け贄になるところを再び!」
あらためて言うのもなんなんですが、椎名林檎ってやっぱり抜群に歌がうまいですね。僕は勝手に彼女のことを「声帯のシルク・ドゥ・ソレイユ」って呼んでいるんですが、彼女は5種類の声色を使いながら、倍音を出すんです。狂気を表現しているようで、実はヒーリング効果がある。そこが、並のアーティストのヒステリックなだけの歌声と違うんです。それによって、性的な描写や人としての痛さを歌の中で表現できる。マンガに例えると、普通の人ならちょろっとした線で表現する「ヨダレ」を、彼女の場合は"立体感""匂い""照り"といった「質感」まで伝わるような、劇画調で描いてる。そういう質感を、音楽でいやらしく醸してるんですよ。