辞める?辞めない?
キヤノン大分工場をめぐる脱税事件が話題となっているが、事件との深い関与が指摘される日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)に対する責任論も強まっている。御手洗会長は「事件との関係はまったくない」とするが、経済界には同氏に対する批判が渦巻き、御手洗会長が退任に追い込まれるとの観測が浮上しているのだ。
「経団連会長は、通常なら2期4年務めるのが慣例。それに従えば2006年5月に就任した御手洗会長は10年5月で任期満了だが、今年5月に途中退任するとの噂も広まった。結局その線は薄いようだが、彼の求心力はもはや皆無に近い」(全国紙経済部記者)
財界での話題は、すでに後任人事に移っている。今のところ最有力候補は、東芝再建の立役者といわれる西田厚聰社長。西田氏は5月に経団連副会長に就任予定だが、「目指すならいちばん高いところ」と周囲に漏らすなどしており、周囲の期待も高まる。また、同じく業績のV字回復を果たしたパナソニックの中村邦夫会長の名前も挙がるが、前出の記者は「2人とも、結局は不採算事業をリストラして業績を回復しただけ。リストラ批判が強まる現在、適任とは言い難いのでは」と語る。
そんな中指摘されるのが、経団連の存在意義。かつては政治に対して真っ向から正論を主張し、会長職は「財界総理」とさえ言われたもの。しかしキヤノンは昨秋の景気悪化以降、大分の子会社で大規模なリストラに真っ先に踏み切ったほか、06年には同社の偽装請負問題を朝日新聞が報じたことを受けて同紙への広告出稿を取りやめるという暴挙にも出ている。
「御手洗氏に限らず、気骨を持った経営者が少なくなった。サラリーマン化が進んでいることに加え、日本経済自体の凋落があり、有為な人物が育っていない。迷走する麻生政権に対しても、昔なら経団連会長がぴしゃりと言っていただろう」(全国紙経済部デスク)
「経済一流、政治二流」といわれたのも今は昔。現代は、「経済三流、政治三流」という状況か......。
(千代田文矢)