まるで生け花を生けるかのように、女性たちを縛っていくゴン・トラボルタ。
東京都渋谷のクラブ。会場には外国人客やボンデージ姿の女性たちが目立つ。やがて、ステージ上にオレンジ色の派手なカラーシャツを身にまとったアフロヘアの男性が登場。1970年代のヒットチューンと共に軽やかな手さばきで、瞬く間に2人の女性を縛り上げていく。男性の名はゴン・トラボルタ。彼の一挙一動、いや、一挙一縛に観客らは陶酔し、場内は興奮のるつぼに。
この日、イベント「fetiSM」に登場したゴン・トラボルタとは、緊縛師として高名な有末剛氏の一夜限りのキャラクター。SM界はもとより、映画、小説、写真等、メディアをまたぎ、緊縛の持つ芸術性とエンタテインメント性を知らしめてきた巨匠である。
寡黙かつ峻厳なる緊縛師の像を描いていたが、ご本人は非常に温和な方。それに甘えて興味本位の質問で恐縮です。これまでの経験から、出会った女性を見て、その子が縛られるのが好きかわかりますか?
「80%の女性は、自身がそれを好きなのかどうか、わかっていません。そういう女性は、自分の引き出しの中身を知らない。私はただ、その引き出しを探してあげるだけ。多くは、それが開けられることを待っています」(有末氏)
初めての女性でも、問題なく縛れるのでしょうか?
「はい。ただ、拒絶が激しい場合には、縄が走りません(うまく結べない)。縄は生きていますから」
では、緊縛の神髄とは? 巨匠は穏やかに答える。
「縛ることは、抱きしめることです」
(文・写真/小林弘人)
ありすえ・ごう
70年代後半に緊縛師としてデビュー。SM雑誌やにっかつロマンポルノ、AVをはじめ、「月刊」シリーズ(新潮社)といった人気写真集など、多くの作品にかかわる。作家としての顔も持ち、団鬼六原作映画『花と蛇』では役者としても参加。累計緊縛数は約1万(!)とか。公式サイト 有末剛商店「十五や」