(撮影/田中まこと)
──奇怪な芸風で孤高の道を突き進む芸人・鳥居みゆき。昨年の単独ライブでは、自身の葬儀を模した演出で観客を圧倒した。そんな彼女が抱く、密かなこだわりとは......?
白装束をまとい、うつろな目で奇声を上げてはしゃぎ回る怪芸人・鳥居みゆき。昨年7月に行われた単独ライブ『故 鳥居みゆき 告別式~狂宴封鎖的世界~』も、チケットが即日完売の人気ぶりだった。
「そうですね、なかなかチケットが取れなかったみたいですけど、私は、取れました! 私、あの会場に入れたので、それだけでもすごいことです」
......と、相変わらずのマイペースなお言葉。DVDが発売されて明らかになったライブの内容は、いつもの彼女のイメージをさらに強烈に押し出したような、危険な香りに満ちていた。鳥居みゆきの葬儀という設定で行われた異色のライブで、事前の告知を受けて観客も喪服姿で彼女の死を悼んだ。ここで鳥居が演じたネタは、「想像妊娠する末期がんの女性」「死刑執行を受ける女子学生」など、「死」をモチーフにしたものばかり。鳥居の中に潜む「死への願望」を表現しているのでは、と深読みしたくもなるが、「そういうつもりじゃないんです」と本人はきっぱり否定した。
「むしろ逆です。生への願望です。私のファンの人で『私も心の病気なんです』って言ってくる人がいるんですけど、そういう人が例えば『死にたい』とか思ってるときに、『がんばれよ』って気安く言ってもらいたくないと思うんですよ。私もそうだから、わかるんです。そんなときに私のネタを見てほしいんです。『やだなー、全部ダメだー』って思って、励まされたくないようなときに、もう一層ちょっと下の部分に触れると、見えてくるものがあるんです。......わかりますか? ここまで」
鳥居が自身のお笑い観を、いつになく真剣な口調でまくし立てる。
「だから、このDVDでは、必ず誰かしら死ぬんです。でも、それは死を侮辱しているのとはわけが違います。生きたいという願望なんです。死をもって生を知るんです」
ここまで一気に語ると、鳥居は表情を緩ませて、最後に「まあ、全部ウソですけどね。ふっふー」と付け加えた。
どこまで本気なのかはわからないが、「死」のイメージに固執する彼女の創作意欲の原点が、少しだけ垣間見えたような気がした。
(ラリー遠田)
とりい・みゆき
1981年生まれ。白装束をまとい、包帯だらけのぬいぐるみとマラカスを振りまわしながら、取り憑かれたように奇声を発するネタで人気の芸人。
『故 鳥居みゆき告別式 ~狂宴封鎖的世界~』
昨年の単独ライブの模様を完全収録。幸せな人生を過ごす鳥居が、突然、狂気に陥り自殺するという単独ライブへのアプローチや、随所に見られる鳥居のコスプレも見逃せない。
発売元/Contents League、ビクターエンタテインメント 価格/3990円(税込)
『みみずひめ』