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凶悪犯罪の思わぬ落とし穴

レンタカー客は殺人犯!?業界を悩ます訴訟問題

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小泉容疑者が警視庁前に乗りつけた軽自動車のナンバーには、「わ」の文字が。

「またかよ、勘弁してくれ!!」

 レンタカー会社の役員は叫ばずにいられなかった。昨年11月に世間を震撼させた元厚生事務次官宅連続襲撃事件。同23日に小泉毅容疑者が警視庁に出頭した際乗っていた軽自動車のナンバープレートには、レンタカーであることを示す「わ」の文字が入っていたのだ。この役員は「他社の車両であってくれ」と願いつつ、確認作業に追われた。

 犯罪に使われた車がレンタカーであるかどうかは今、この業界にとって死活問題である。きっかけは、昨年5月に仙台地裁で下された判決。2005年に仙台市内の商店街で暴走したレンタカーのトラックが7人を死傷させた事件で、被害者の遺族は、犯人に車を貸したニッポンレンタカーにも責任があるとして損害賠償を請求、仙台地裁は「トラックの運行供用者として責任がある」とする判決を下したのだ。大方の予想を裏切る判決だったが、衝撃に輪をかけたのが、同社が「遺族の心情を考慮する」として判決を受け入れて控訴しなかったこと。関係者の間では同社の対応に対し、「レンタカー業界のためにも控訴すべきだった」(大手レンタカー会社幹部)と、憤りの声が渦巻いたほどであった。

「この裁判で原告側から『犯罪に使うことに対する予見・回避可能性がある』とされたことに対し、ニッポンレンタカーは『引っ越しに使うと偽装されていた』と真っ向から否定したが、裁判所は支払いを命じた。でも、客が犯罪を起こすかどうかなんてわかるわけがない。同社は、裁判が長引くことによる裁判費用の増大と風評リスクを恐れて控訴を断念したようだが、これでは業界の首を絞めることになる」

MEMO訴訟問題
レンタカーの借受人がそのレンタカーを使って犯罪を犯した場合、貸した業者側も責任を負わされる可能性があるリスクのこと。レンタカー業界は今、このリスクに戦々恐々となっている。

 一部レンタカー会社では判決を受け、ある程度客の信用を担保できるクレジットカード会計のみにするところも出てきている。ただ、不景気の中で「現金客を断るのは難しい」(中堅レンタカー会社)との声もあり、対応に苦慮しているのが現状。レンタカーを使った秋葉原無差別殺人事件も起きる中で、仙台地裁判決に対する怨嗟の声は高まっている。

 しかし、業界からは「今回の判決は、業界の問題点を浮き彫りにした」との声もある。小さな店舗ではアルバイトの質が低く、定められた本人確認をしていないケースも見受けられるというのだ。こうした状況を招いた要因を、大手レンタカー会社の現場担当者は「会社側がコスト削減に走りすぎたためだ」と指摘する。

「レンタカーは業者が増えすぎて過当競争に陥っており、コスト削減が至上命題。そのため、従業員の質の低下などの問題が増えてきている」(同)

 自社レンタカーが犯罪に使用されないよう祈るだけでは、問題の抜本的な解決には到底至らないことは言うまでもないだろう。
(隅田哲太)


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