――写真集という魅惑のパラダイスで日夜繰り広げられる、露出という名の仁義なき闘い──。このアツきバトルを制すのは、美人すぎる八戸市議か巨乳深キョンか若き女帝アッキーナか、はたまた新婚真木よう子か?
写真集売場に一歩足を踏み入れれば、アドレナリン大放出。そんな男子も多いはずだ。
「月刊現代」(講談社)や「月刊PLAYBOY」(集英社)など、老舗雑誌の休刊が相次ぎ、深刻化の一途をたどる出版不況。その中にあって、制作費や紙代などに高コストが要求されるタレント写真集は、そうやすやすと出せるものではない。新人アイドルならば、制作費の安いDVDからスタートして売り上げ実績を作る必要があり、知名度のあるグラビアアイドルでも、ヒットがなければリリースのたびに肌の露出を増して対応せざるを得ないような状態なのだ。
最近ではタレントサイドも、数千部しか出版されない写真集を出すことより、数万部単位で確実に読者の目に触れる週刊誌などの撮り下ろしグラビアに、むしろ積極的になっているようにも見受けられる。また、低コストで制作可能という理由から、電子書籍タイプのネット系グラビアサイトも徐々に盛り上がりつつあるようだ。しかし、やはりまだ構成や見せ方の点で、「デジタルグラビアならでは」の方法論は確立されておらず、またファンにとっても、データでの販売というのは所有欲を満足させられない。
そう、所有欲こそが、現在のタレント写真集の存在意義である。今や紙の写真集は鑑賞物では決してなく、ファンの消費欲を刺激するオタク向けのコレクターズアイテムへと変貌を遂げてしまったのだ。
そんな状況ながら、今年のタレント写真集業界にも、いくつかの特筆すべき作品が見られた。まず最大のヒットといえば、『妄撮』(講談社)であろう。これはもともと、月刊誌「KING」【1】にて連載されていた企画グラビアをまとめたもの。過去になかったと言えるほどの画期的な内容ではないが、合成写真の精巧さやシチュエーションなどのディテールに凝った内容や、判型を小さくして価格を抑えるなどの工夫が功を奏し、異例のヒットとなった。
このほかにも、高額のプレミアが付いた『月刊真木よう子』【2】の続編であり、カメラマンをリリー・フランキーが務めた『月刊真木よう子Special』(同)など、話題性の強い作品が目立つ。
しかし、それらとは別に、地味ながらも内容やコンセプトの面白さで勝負している作品も少なからず存在した。不況でも股間をアツくした写真集【2】では、それらのタレント写真集のうち、一定のテーマにおいて特に印象に残ったものを2冊ずつ6ジャンルに絞り、対決させる形で論評したい。タレント写真集──この、表層的に見えて実に奥深い商品の今後を眺める際の一助となれば幸いである。
(文/エリンギ)
【1】「KING」
【2】『月刊真木よう子』