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第1特集
犯罪者が愛した知られざる獄中のベストセラー【2】

元囚人のマンガ家・花輪和一──「刑務所の醍醐味は、官本の中から面白いものを発掘!」

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 収監された札幌刑務所と函館刑務所の中では、夕食後は毎晩、刑務作業がない免業日はほぼ終日、本を読んでいました。特に函館刑務所内にある工場の食堂に地味なオーラを放っているスチール製の本棚が2つあって、膨大な数がある官本(=借りて舎房で読める蔵書)の中から面白いものを探し出すのが醍醐味でした。小生は200冊前後読みましたが、大変面白かったのが23冊、普通に面白かったのが36冊、まぁまぁなのが28冊という感じでしたね。その中から感動した本を3冊挙げるなら、まず1冊目が神山恵三著の『森の不思議』(岩波書店)。森の木のさまざまな薬理作用について解説された本で、「山中でのケガは3種類の異なる木の葉を揉んでつけると、膿まずに早く治る」とか「泥につけた生ヒバの皮を乾燥させて縄にしたら、蚊取り線香の代わりになる」など、より気持ち良く自然に溶け込みたいときの手引書となりました。続いて2冊目は、木村尚三郎著の『ヨーロッパ文化史散歩』(音楽之友社)。フランス中世の研究者である著者が、西欧文化を紹介する上で日本と対比させるのですが、西欧人と日本人について新しい見方ができるようになって面白かったです。たとえば「西欧人にとっての時間は、1人ひとりの手の中にあり、個人がコントロールすべきもの。対して日本人は、ひとつの共通した時間が自分の外で流れている」とか「日本人は視覚型。対して西欧人は聴覚型」など、新発見の連続でした。3冊目は、田村京子著の『捕鯨船団 女ドクター南氷洋を行く』(集英社文庫)。中高年が多く、病人も多い捕鯨船団にたったひとりで乗り込んだ女性医師である著者の、約7カ月にも及ぶ活躍ぶりが描かれています。近代医術ではないはりや灸を使用したことが好評を得て、多くの漁船員から慕われるようになる姿はかっこいい! 当時の捕鯨船団の様子もよくわかって、大変面白かった記憶があります。

 最後に小室哲哉さんに勧める一冊ですが、アメリカの光明思想家であり、死後も世界中で著書が支持されているヴァーノン・ハワード著の『スーパーマインドあなたは本当にあなたなのか』(日本教文社)はいかがでしょうか。小室さんは物質世界の究極まで行かれた天才なので、今度はメンタル世界を開拓されるのも一興かと。メンタル本はいろいろと読んでみましたが、同書と加藤諦三氏の一連の著作だけが、小生には受け入れることができました。ただ、メンタル本はどんなに良いことが書かれていても、自分の感性に合わなければ役に立ちません。なので、本来なら小室さんが自身で選ぶのが一番良いのですが.……。ただ、個人的には読書後に苦しみが和らいだので、そういった意味でも、ぜひ今の小室さんに勧めたいです。(談)

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花輪和一(はなわ・かずいち)
1947年生まれ。マンガ家。94年、趣味が高じ、改造モデルガンや故障した拳銃を修理して所持していたことから、銃砲刀剣類不法所持と火薬類取締法違反で懲役3年の実刑を受ける。その刑務所暮らしの日々を赤裸々に描いたマンガ『刑務所の中』(青林工藝舎)が大ヒット、映画化もされた。近著に『刑務所の前』シリーズ(全3巻/小学館)がある。


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