角栄金脈、佐川急便事件からホリエモンまで、政治と金が絡む場面には必ず垣間見えるブラックマネー。NHKスペシャル『ヤクザマネー』も話題となる昨今、あの狂騒の80年代バブル期以降、本当に読むべき"裏経済本"を一気に紹介!!
昨年11月に放送されたNHKスペシャルの放送内容をまとめた書籍『ヤクザマネー』(講談社)などをきっかけに、ウラ経済本が好調だ。
同書で描かれているのは、ヤクザの最新の"シノギ"である。証券市場やベンチャー企業への投資、融資に何億という資金を投入し、法の目をかいくぐるマネーゲームで増大させる。その実質的な運用を担当しているのは、"共生者"と呼ばれるカタギの金融エキスパートたちだ。今、株式市場は、オモテとウラのボーダレス化が進んでいるのである。
『同和利権の真相シリーズ』や『共生者』(共に宝島社)などウラ経済に関するムック・書籍を多数手がけた編集者、井野良介さんは次のように語る。
「ウラ経済本を読むにあたって押さえたい事件は、86年の平和相銀不正融資事件、91年のイトマン事件、92年の東京佐川急便事件です。企業と反社会的勢力のかかわりの歴史を調べていくと、必ずこれらの事件につながります。入門者に勧めたいのは、『新版・企業舎弟 闇の抗争』(講談社+α文庫)。著者の有森隆さんとグループKは経済事件に関する本を多数出しており、事件の背景がわかりやすく解説されています」
バブル前もヤクザは株に投資していたが、バブル崩壊以降、状況はそう単純ではなくなる。96〜01年にかけての金融ビッグバンで規制緩和が進み、新興市場が開設され、ベンチャー企業が注目されるようになった。だが、バブルで痛い目にあった銀行は、回収リスクの高いベンチャーへの融資には消極的で、回収のノウハウを持つ消費者金融に高金利で貸し付けた。そこで、ベンチャーが、最終的な資金調達先として頼るようになったのが、反社会的勢力である。
「バブル紳士の守護神とも呼ばれた元弁護士の田中森一氏は、『アウトローの経済活動が世の中の金回りをよくしてきたんだ』と言っていました。経済のグレーゾーンには、仕手筋や金融ブローカーなど、硬直した社会にブラフをかける 創造的な破壊者 がいるのも確か。無茶をする連中がいなければ、動かない経済もある。こうした身も蓋もない現実を学べるのも、ウラ経済本のおもしろさだと思います」(井野氏)
ウラ経済本の読みどころは豊富だ。
(文/安楽由紀子)