850億ドル──米国当局による、AIGに対する緊急融資額(日本円で、約9兆円)
『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』
9月15日、サブプライム問題で経営危機に陥っていた米証券4位のリーマン・ブラザーズが、経営破綻に追い込まれた。翌朝の東京株式市場においても3年2カ月ぶりの安値を記録するなど、その影響は世界各地に波及。「地獄の釜のフタが開いた」とまでいわれる世界経済の悪化をもたらしたこのリーマン破綻だが、きっかけは米国当局の公的支援の見送りだった。
その2日前の13日。ウォール街からほど近いニューヨーク連邦銀行にポールソン財務長官や金融機関トップなどが集い、リーマン救済策に対する会議が持たれた。この会議でリーマン支援が明言されることがリーマンにとっての頼みの綱だったが、各金融機関による支援の前提条件となったのは、米国政府がリーマンに公的資金を投入することによる、資本力の増強。米国政府は9月に連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)など2社の救済に踏み切っており、金融関係者は「リーマンも同様に救われる」と期待していた。しかしポールソン財務長官は、「納税者への説明が付かないので、政府はリーマンを特別扱いはしない」と発言し、さっさとワシントンに帰ってしまう。これによって金融業界は、「リーマンは政府に見捨てられた」と判断したのである。