──今年から京都議定書の第2約束期間がスタートし、条約を批准した各国は温室効果ガスの削減を本格化しなければならない。そんな中、排出量取引が注目を集めている。だが、ヨーロッパなどの国際市場では日本の商社や金融機関も取引を行っているが、国内では財界の反発により、いまだ制度すら立ち上がっていないのが現状だ。今回は、経済産業省に排出量取引の重要性を訴えてきた京都大学の諸富徹准教授を交え、排出量取引の現状と課題、そして日本の取るべき選択を考える──。
【今月のゲスト】
諸富徹 [京都大学大学院経済学研究科准教授]
神保 今回は排出量取引についての知識を深めるため、経済産業省「地球温暖化対応のための経済的手法研究会」で具体的な提言もされている、京都大学大学院経済学研究科准教授の諸富徹さんをお招きしました。EUは2005年にヨーロッパ域内排出量取引制度をスタートさせており、実は日本も、すでに政府レベルでは海外と取引を行っています。しかし、国内の排出量取引は産業界の根強い反対があり、導入には至っていません。また一言で必ずしもこれはオールマイティなシステムではないという主張も見られます。まず、排出量取引の現状を簡単にご説明いただけますか。