――あなたの知らない「夜の世界」をご案内します
5000億円企業・大王製紙創業家3代目の御曹司であり、東大法学部卒の超エリート。自ら起こした事件を受けて、会社を去ることになったが、自身が有する莫大な資産と華麗なる人脈、そして、その人柄に変化なし。そんな井川意高が、若き日から今に至るまで夜な夜な繰り出してきた「天上の宴」というべき夜の世界に大衆を誘う。実業家、資産家、芸能人、文化人、港区女子……そこには、どんな人々が集い、いかなる物語が奏でられてきたのか――。
さて、有名プロ野球監督や大手芸能事務所社長と取り合った女性の話である。
高校を卒業してすぐに銀座のクラブ「麻衣子」に入店したS子は、女性というより女の子といったほうが相応しかったかもしれない。小柄で華奢、細身で和顔と、今の私の好みとは真逆のS子を気に入ったのは、振り返ると不思議な気がする。
おそらく当時30歳前後だった私は、いくら美人揃いといえども、20代後半から30代の女性が大半の銀座で、若く初々しい彼女に親近感を持ったのかもしれない。
S子とは、食事をしては同伴出勤、そしてアフターという日々を重ねているうちに、いつしか付き合いはじめ、旅行にも一緒に行く仲になった。
そうしたなか、ひとつ気になっていたことがあった。父・高雄や私自身付き合いのあるプロ野球のH監督も彼女を気に入っていて、自身の席に呼んでいる場面を「麻衣子」で何度か目にしていたのだ。現役時代も数々の浮名を流していた彼に口説かれて、彼女はどう思っているのだろう? あるいは実は彼とも関係を持っているのではないか? 若かった私は疑心暗鬼になり、恐る恐るS子に尋ねた。
「H監督には、まだ口説かれてるの?」
彼女は、きょとんとした顔を一瞬見せたあと、くすくす笑いながら言ったのだった。
「なに? 心配してるの? 大丈夫だよ! 確かに口説かれたけど、『え〜? いいの? 私、R子ちゃんと高校の同級生だよ』って言ったら秒で終わったから」
R子というのは、後にプロスポーツ選手となる、H監督の娘のことである。
さすがに遊び人の彼も、口説いたホステスが娘の同級生と聞いて、引いたようだ。
ほっとしたのも束の間、次は知らない間に恋敵となっていた年輩の経営者に脅されることになる。
当時、私はホテルオークラのオーキッドバーで、1~2杯カクテルをひっかけてから夕食に向かうのが習慣だった。ある日そのバーで、旧知の芸能事務所のI社長に通りすがりざまに言われたのだ。