【BAKU】琴線に触れるサウンドとの邂逅を促す匠のスキル

――ヒップホップのマインドを貫くジャンルレスなサウンド。唯一無二のクリエイターとなった勤勉家の揺るぎないスタンス。

多作家である。今年だけでも4枚のシングルを発表し、12月11日にはインストゥルメンタル・アルバム『LWTE』のリリースに至る。「コロナ禍でリリースできていなかっただけなんですけどね」と自重するが、その楽曲群からは、丹精を込めて作り上げられた品質の高さが感じ取れる。

『LWTE』
BAKU(KAIKOO)

BAKU。中学2年でレッド・ホット・チリ・ペッパーズにハマった少年は、イギリスの音楽ランキング番組『BEAT UK』を経由して、「DJなら自分もできそう」という見立てからターンテーブルを購入し、スクラッチに没頭。バンドを組んでみたかったものの、スクラッチを極めるべく、高校に進学すると自然とヒップホップに傾倒していく。生まれ育った土地は東京世田谷区。時代背景も重なってか、78年生まれの彼の周囲にはチーマーばかりが増えていったと話す。

「僕は全然不良じゃなかったから居心地が悪かった。『モテてえからDJとかやってんだろ!』とかいきなり渋谷駅前で殴られたり、マジで理不尽な環境でした」

そんな悪環境から脱するきっかけとなったのが90年代後半、ラッパーの般若とRUMIによるラップグループ〈般若〉のライブDJを務めることになってから。

「僕が主催したイベントにRUMIがフリースタイルで出たときがあったんです。全然知り合いでもなかったので『女の子なのにすごいな。東京の子かな?』って思ってたら、ヒップホップ専門のラジオ番組『Hip Hop Night Flight』に般若が出てて、同い年で、さらに2つ隣の駅だったこともわかり、そしたら会ったこともなかった般若から家電があって(笑)」

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