スピリチュアル・陰謀論の トンデモ本'24

メディア不信と悪質なフェイクニュースが飛び交う現在。医師やジャーナリスト、そしてスピリチュアル系のインフルエンサーたちによる陰謀論じみた“トンデモ本”の出版は後を絶たない。
まっとうな表紙やタイトルで「普通」の皮をかぶった本がある一方で、完全に「信者」たちに向けて書かれた本も……。これらは一体何なんだ? 陰謀論に詳しいアヤシイ見た目の2人が、徹底解説。

2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的流行を背景に、根拠不明な主張を唱える関連書籍が相次いで出版された。「表現の自由」の範疇ではあるものの、一部には人々の不安を煽るだけでなく、陰謀論やフェイクニュースを引用した内容も含まれ、社会的に問題視されるべき書籍もある。

そこで、このような反ワクチンや反マスクに端を発した「タブーな本」の中でも特に「ヤバい」ものを、トンデモ・ウォッチならお任せの黒猫ドラネコと雨宮純の名コンビに語り合ってもらった。

――今年は衆議院議員総選挙で参政党が3議席を獲得し、アメリカでは「ディープステートと戦う」ドナルド・トランプが大統領選に勝利するなど、陰謀論者たちが力をつけた年でした。

反ワクチンデモだけではなく、今年はQアノンの日本版・Jアノンたちによる「トランプ大統領必勝祈願デモ」も行われた。この「トランプ神輿」は高さ3メートルあり、目も光る。

雨宮純(以下、雨宮) 21年はコロナ禍の影響を受けて、「神真都Q」という反ワクチン団体が一時的にかなり目立っていましたが、それが今は、いろいろな勢力が合流して大きな運動を繰り返すような形に変わった気がします。

黒猫ドラネコ(以下、黒猫) 「反ワクチンデモのバイト騒動」もありましたよね。

――9月に東京・有明で開催された、新型コロナウイルスのワクチンに反対するデモ集会に、1万円の報酬で大量の「サクラ」が動員されていた問題ですね。

雨宮 何もわかっていない若者たちが1万円欲しさに利用されてしまっているのは、非常に危険なことで、大きな社会問題だと思います。

黒猫 当日、私たちも現場に行きましたが、この手の集会によくいる中高年だけではなく、歌舞伎町にいそうなヤンチャな見た目の若者たちが「ワクチン反対!」とヤケクソで叫んでいたのが印象的でした。

――今年は「闇バイト」が話題になりましたが、陰謀論界隈でも類似案件はあったのですね。

黒猫 世間から見たら闇バイトかもしれません。しかし、雇った側は自らを「光の戦士たち」だと思っているため、彼らからしてみれば「光案件」なのでしょう(笑)。それと、今年は陰謀論や反ワクチンなど自らの主張を広めるために、選挙を利用した者が多かった。特に大きかったのは内海聡が、東京都知事選挙と衆院選に出馬したことです。

――内海氏は選挙で「今の自民党やワクチン問題、売国問題などを訴えた」内科医・漢方医です。都知事選では12万票以上も獲得しました。

黒猫 彼を知るために重要な役割を果たすのが、『医師が教える新型コロナワクチンの正体2 テレビが報じない史上最悪の薬害といまだに打ち続ける日本人』①です。これまでもワクチン接種に反対する書籍は多数ありましたが、新型コロナワクチンに関する本で大きな話題……というよりも炎上したのは、同氏の『医師が教える新型コロナワクチンの正体 本当は怖くない新型コロナウイルスと本当に怖い新型コロナワクチン』(ユサブル)でした。同書は騒動になったことで、ネット販売の取り扱いが一時停止にもなりました。

――それでも懲りずに出版された続編が、本書ということですね。

黒猫 この本では、ひろゆき、堀江貴文、河野太郎議員をはじめとした「コロナ騒動を煽った」とされる人物を名指しで批判しています。出版や表現の自由はあるにせよ、むちゃくちゃなことを勝手に書かれた彼らは、抗議したほうがいいでしょう。

雨宮 訴えてもいいくらいですね。

黒猫 内海の特徴は、Qアノンなどの陰謀論は信じてないところです。そのため、「逆張りの逆張り」といったことをやっているんですね。陰謀論を信じないフリをしながら、その界隈には寄り添っています。

雨宮 彼はヒカルランドが出版しているレプティリアン陰謀論【編註:爬虫類型人類が世界を支配しているという、イギリスの著述家であるデーヴィッド・アイクが提唱した説】の「ムーンマトリックス」というシリーズの監修も務めていますからね。

黒猫 決して褒められたことではありませんが、この本のうまいところは「医師が教える」というタイトルです。彼の主張を知らずに、タイトルや表紙で気になった人は、普通に買ってしまうでしょう。

雨宮 表紙も、まっとうに見えますよね。

3議席を獲得した「参政党」の正体

――内海氏は前出の有明のデモにも登壇しています。このときは、立憲民主党の原口一博氏など国会議員も参加しました。

黒猫 彼は「新型コロナワクチンを接種したことでがんになった」と信じており、『プランデミック戦争 作られたパンデミック(悪性リンパ腫との闘いを超えて)』②という書籍を出版しています。「民間療法で治った」と主張していますが、実際は標準医療も受けています。つまり、どちらの医療でがんを克服したのかはわからないはずなんです。

雨宮 新型コロナワクチンと“被害”の関係性は誰にもわからないのに、「被害がある!」と言い切ってしまうことが危ないですね。

黒猫 しかも、彼は衆院選では圧倒的得票で当選しています。国民を代表する人物が「ワクチン接種はやめましょう」と呼びかけているのは、恐ろしいことです。

雨宮 国会議員がそのような主張をすることで、社会的なリスクにもつながります。まぁ、そんなこと言ったら、参政党なんて議席を3つ取ってしまったため、彼らの主張にお墨付きを与えてしまっているんですよね。そこはかなり脅威だと考えています。

――結局、参政党とはどういった集団なのでしょうか?

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