――つげ義春の短編漫画を原作にした実写映画で、妖艶なヒロインを演じた中村映里子がその胸中を語った。
(写真/淵上裕太)
障害者の性を題材にした劇映画『岬の兄妹』(2019年)で衝撃的なデビューを果たした片山慎三監督。その後も話題作を連発する片山監督の新作となるのが『雨の中の慾情』だ。孤高の漫画家・つげ義春の短編漫画を原作に、台湾ロケを敢行し、エロス(生)とタナトス(死)がせめぎ合う不思議な恋愛ドラマとなった。
売れない漫画家の義男(成田凌)と作家志望の男・伊守(森田剛)との間で揺れ動くヒロイン・福子に扮したのは中村映里子。これまで満島ひかりと共演した『カケラ』(10年)やR18指定となった『愛の渦』(14年)などの個性的な作品で注目を集めてきたが、今回は男たちにとってのミューズ的な存在となる福子を、大人の女性の魅力たっぷりに演じてみせている。
「片山監督との出会いは、『岬の兄妹』(19年)のオーディションでした。松浦祐也さん演じる主人公の妹役を和田光沙さんにするか私にするかで、片山監督は悩んだそうです。結果、和田さんが選ばれたのですが、片山監督には短編映画『そこにいた男』(20年)にも呼んでいただきました。それ以降も片山監督は次々と作品を手がけられて。『ガンニバル』おもしろいなぁ、またご一緒したい! と思っていたところに、久々に連絡をいただいたんです」
片山監督からの連絡は「新作映画を撮ります! かなりハードな役ですが、前向きに考えてみてほしい」というもの。翌日、キャスティング担当から正式に出演オファーされ、本作の脚本が届いた。
「おもしろい脚本でした。こんな作品に出演できるチャンスがあるなら、ぜひと思いました。でもオール台湾ロケだと知り、自分の都合だけでは決められないなと。というのも、その当時2歳の息子がいたので、家族の理解と協力が必要でした。家族には『どうしてもやりたい。やらなかったら一生後悔するかもしれない』と話したところ、『思いっきりやっておいで』と送り出してもらえたんです」