『egg』発のヒップホップユニット[ももあ&erika]半熟卵っち見参 忖度なしアイドルラップ品評会

「ェィョー、ワッツアップ!」──アイドルがステージでフリースタイルを始めることもめずらしくなくなったこのご時世。これまでに生み落とされた星の数ほどの「ラップを採用したアイドルの楽曲」は、今や違和感すら覚えず日常茶飯事的に楽曲へ取り込まれているようにも感じる。そんな近年の楽曲のクオリティを探るべく、ギャルシーンからラッパーとしても活躍する半熟卵っちに協力を仰いだ。

(写真/井上琢也)

時はヒップホップ最盛期。3万人を動員する大型フェスの開催をはじめ、TikTokにおける数多くのバイラルヒット、さらには民放の音楽番組『EIGHT-JAM』(テレビ朝日系)で特集が組まれたりと、威勢の良さは多方面から肌身で感じることができる。その影響は音楽業界全体はもちろん、アイドル界隈へも飛び火。もともと“ラップ”が採用されたアイドルの楽曲は、かなり昔から存在するが、この数年は特に顕著である。意図的にラップをするアイドルがいれば、基本はJ-POPに身を置くが当たり前のようにラップを採用するアイドルも存在する。今もなお人気ジャンルであるフリースタイルバトルシーンで異彩を放つアイドル的MCによる楽曲もあれば、果てには自ら“アイドル”を打ち出していないものの推し活文化によってアイドル視されているアーティストのラップ曲など、スタイルの数も千差万別。

本稿ではギャルカルチャーのバイブル『egg』の専属モデルであり、同誌がクリエイティブを担う次世代ヒップホップユニット〈半熟卵っち〉のerikaとももあに白羽の矢を立て、「アイドルのラップ作品を見聴きしながら忖度なしで批評」企画を遂行。

自らもラップをカマすギャル2人が下す、アイドルラップ作品をレッツ・リスニング!


【1】YOASOBI
「アイドル」(23年)
アニメ『推しの子』のオープニング曲で、YouTubeでのMV再生回数は5億回を突破。セカンドヴァースから始まる幾田りらによるラップは、ほかのボーカルパートとはテンションの違うスタイルで披露。


ももあ(以下、m) これってアイドルの曲?

erika(以下、e) タイトルがアイドルなだけだよね(笑)。

m (とはいえラップのヴァースを聴き終えて)なんかももが知ってるラップのスタイルではないかも。別のベクトルを感じるていうか、リリックの内容が日本アニメ感強めだからかな。なんか童謡の「寿限無」っぽい。

e でも、“アイドル”ってテーマで伝えたいことと思っていることをラップしてんのは、結構ヒップホップカルチャーにリスペクト払ってる感じがする。

m 歌のパートはめっちゃ明るいのに、それと比べるとラップのヴァースだけテンションめっちゃ低くなるよね。「ラップ=アングラ」みたいなイメージが強いからかな?

e (ヒップホップの)コアなリスナーから「このラップどうよ?」とか物議を醸しそうだけど、これは全然アリ。やっぱ文化的にリスペクトは大事!


【2】ME:I
 「Click」(24年)
国内最大級のオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』で選ばれた11人組ガールズグループ。王道ガーリーポップなアイドルらしい楽曲の中にも、メインラッパーによるラップのパートはしっかり用意されている。


m (MVを見ながら)あ、もしかしてこれってK-POP?

e いや、日本語で歌ってる。

m これTikTokでめっちゃ使われてる曲だ。ラップも入ってるんだね。

e えりもこれ聴いたことある。

m ラップのフロウがBLACKPINKっぽいけど、たぶんこの子たちって直接ヒップホップに触れず、「最初っからK-POP大好き!」みたいな流れでラップを知りました&学びました、って感じなんだろうね。

e うんうん、わかるわかる。先人たちのコテコテのゴリゴリの日本語ラップから影響を受けたとかじゃなく、スタートは絶対そこらへんだよね。むしろそれってアイドル界隈だけじゃなく、マジのヒップホップのラッパーもすごい昔までさかのぼらずに最近のものから影響を受けてると思う。


【3】INSPIRE
「BEYOND THE HORIZON〜勝者の宴〜」(24年)
「時代や国、年齢さえも超越し“良いもの”にインスパイアされ進化し続ける6人組」がモットーのガールズグループ。EDMの系譜にあるトラックの上でメンバー全員がド頭からマイクリレーに挑む。


e パッと見でめっちゃアイドル。色味もアイドル。「かっこよくラップしたい!」っていう気持ちが前面に出てるからなのかな、クールに歌ってるだけでリリックはあんまり印象に残らないかな。韻もそんなに踏んでないし。

m ラップのパートだけ声を低くしてるね。ラップあるある。

e サビを聴いたらみんなかわいい声してるし、ラップだからこういうテイスティングにしてみましたー、って感じなんだろうね。

m ラップのスタイル的にはちゃんみなっぽい。でも、このアイドルアイドルしたルックスで頭っからラップしてるのは意外で新鮮かも。

今すぐ会員登録はこちらから

人気記事ランキング

2024.10.6 UP DATE

無料記事

もっと読む