Web3.0は「アイドル」をどう変えるのか?

暗号資産、メタバース、NFTといった「Web3.0」と称される新たなデジタル技術を、その運営や活動に取り入れたアイドルを創出しようという「IDOL3.0 PROJECT」。秋元康プロデュースによる同プロジェクトが動きだしてから、1年半が経った。暗号資産で10億円を調達。大型オーディションを経て、アイドルグループ「WHITE SCORPION」をデビューさせ、画期的な施策を打ち出してきた同プロジェクトの、ここまでの成果はいかほどのものなのか――。

オーバース社長・佐藤義仁[写真左]とWHITE SCORPION・ALLY[写真右](写真/石田 寛)

WHITE SCORPION(ホワイトスコーピオン)
IDOL3.0 PROJECTオーディションで選ばれた11人のメンバーで結成。秋元康プロデュースにより、2023年12月「眼差しSniper」でデビュー。リアルな場でのライブや握手会にとどまらず、メタバースやSNSなどのオンライン上での活動や、NFT(所有権を証明できる技術を用いたデジタルアイテム)のリリースも積極的に行っている。1stミニアルバム『Caution』が発売されたばかり。下画像右側は、メタバースアプリ「ZEPETO」内で活動する際のALLYのアバター。メンバー各々の個性的なアバターが存在する。


群雄割拠、栄枯盛衰のアイドル業界に、“Web3.0”を持ち込み、活路を見いだそうとしているアイドルグループがある。2023年末にデビューしたWHITE SCORPION(ホワイトスコーピオン)だ。

昨春、秋元康と株式会社オーバースが立ち上げた「IDOL3.0 PROJECT」が開催したオーディションの参加人数は約1万人。そこで選ばれた11人によって結成され、12月にデビュー。活動開始から1年足らずだが、デビュー以降5カ月連続シングルリリースや各種フェスへの出演、そして初の単独公演開催やミニアルバム発売と怒涛の攻勢を仕掛け続けている。

「従来のアイドル像にとらわれず、リアルとバーチャルを行き来する」というコンセプトをうたってきた「IDOL3.0 PROJECT」。オーバースの佐藤義仁社長に話を聞いてみると、「Web3.0の活用で、この間、従来のアイドルファンとは異なる層にアプローチできました」と手応えを語る。

自らも長年アイドルオタクであり、証券会社や暗号資産取引所の役員を歴任してきた金融のプロである佐藤社長がまず仕掛けたのが、このプロジェクトのために新規に発行した暗号資産「NIDT=ニッポンアイドルトークン」だ。

「IDOL3.0 PROJECTを立ち上げた際、オーバースはNIDTを発行し、10億円の資金調達を行い、これをプロジェクトの運営に充てています。NIDTの購入者の中には、アイドルには興味がなかったけど、投資案件として優良だと思ってくれた方も多かったようです。実際、NIDTは、当初の販売価格を現在も下回らずに好調を維持し続けています。NIDTの保有者には、特典のNFTがプレゼントされたり、アイドル運営に関わる権利も付与されたりする仕組みにしたのですが、投資目的だった方々が、そうしたプロジェクトそのものに関心を示してくださるようになったんですね。彼らは結果的にWHITE SCORPIONを推してくれるようになりました」

確かにNIDTの販売価格は5円だったが、オーディション中の昨年9月には125円まで上昇。実に25倍だが、この急伸の理由は、オーディションのファン投票に有利な条件で参加できるという権利をNIDT保有者に付与したからだった。つまり、自身の推しの子を審査通過させるためにNIDTを購入したがるファンが増え、取引価格が急騰したのだ。

そうしたファンは、推し活への資金投下にも積極的だ。アートやカードゲーム、ファッションなどで、デジタルアイテムの唯一無二性や所有権を保証する技術であるNFTが注目されて久しいが、WHITE SCORPIONもNFT動画の販売を行い、盛況だったという。

「すべて内容が異なるメンバーのプライベート風動画100本ほど作り、それを3パターン1セットで販売しました。価格は500NIDT、当時だと1万5000円相当ですが、ものの8分で完売してしまいました。自分しか持ち得ない動画という希少価値を、ファンにも理解していただけました」

さらに、投資筋とおぼしきWHITE SCORPIONファンからは、超高額のプレゼントがメンバーに届くこともあったそうだ。

「運営方針として1万円以上のプレゼントはお断りしているので丁重に返品しましたが、そうした従来のファンとは推し活の感覚が違う人たちが満足するような仕組みも作りたい。それで今、SHOWROOMの担当者には、NIDT決済で購入できる10〜20万円相当のギフトを作ってくれないかと相談しているところです」

そこまでお金を使うファンが台頭すると、それを横目で見る従来のアイドルファンが萎縮してしまわないかと心配になるが、佐藤社長はあくまでも「お金のある人だけが応援しやすいというシステムにはしない。さまざまな楽しみ方を提供していきたい」という。

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