「王子様」と「青春の傷」は不可欠! ジャニー喜多川のこだわりとは?

――今年、60年以上の歴史を持つアイドル帝国「ジャニーズ事務所」の名前が消えた。だが、ファンに支持され、男性アイドル界を牽引してきた唯一無二の「ジャニーズらしさ」は、エンタメ界に残すべき遺産のはずだ。今こそ「ジャニーズが残したもの」「今後も旧ジャニーズタレントたちに継承していってもらいたいもの」を語るときだろう。そこで、各分野の識者たちに「受け継がれるべきジャニーズのレガシー」を聞いた。ドラマ、音楽、ダンス、衣装…どこに「ジャニーズらしさ」を感じるかは十人十色。あなたの心に「ジャニーズが残してくれたもの」とは?

歌い手が変わり、時代が変わる中でも常にヒットチャートを賑わせてきた、彼らの楽曲に通じる世界観や送り手のこだわり、マーケティング戦略、そして、そこに宿ってきたジャニーズのレガシーって何?


馬飼野元宏(まかいの・もとひろ)
音楽ライター、編集者。歌謡曲と70~80年代邦楽全般に特に詳しく、著書に『にっぽんセクシー歌謡史』(リットーミュージック)、編著に『昭和歌謡ポップスアルバムガイド』『昭和歌謡職業作曲家ガイド』『HOTWAX歌謡曲名曲名盤ガイド』(すべてシンコーミュージック)、『筒美京平の記憶』(ミュージック・マガジン)などがある。歌謡ポップスチャンネル『しゃべくりDJ ミュージックアワー!』ではコメンテーターを担当した。

郷ひろみのデビュー曲は「男の子女の子」。ジャニーズ初のオリコンベスト10入り。ただし、郷がジャニーズに在籍したのはわずか3年。ジャニー氏のこだわりが詰まった「硝子の少年」でデビューしたKinKi Kidsは、その後、27年間、リリースしたシングルがすべてオリコン1位を獲得している。

ジャニーズの楽曲には、主にふたつのパターンがあります。

ひとつは不良少年の“青春の傷”のようなものを歌った楽曲。不良少年への憧れ、傷つきやすい男の子に対する守ってあげたいという気持ちを喚起させる楽曲で、KinKi Kidsの「硝子の少年」、KAT-TUNの「Real Face」などはこのパターンに当てはまります。

もう一つは、男の子が女の子に“一緒に手を取り合い、輝ける未来へ向かおう”と語りかけるような、王子様路線ともいえるキラキラした世界観の楽曲。フォーリーブスの「地球はひとつ」、郷ひろみの「男の子女の子」、嵐やNEWS、Hey!Say!JUMP、Sexy Zoneのデビュー曲などはこのパターンですね。

ジャニー喜多川氏が、デビュー曲に並々ならぬ力を入れるという点も大きな特徴です。例えば、松本隆さんが作詞、山下達郎さんが作曲を務めた「硝子の少年」。2人は「硝子の少年」より先に「ジェットコースター・ロマンス」「Kissからはじまるミステリー」を制作していたそうですが、「Kissから~」に対して、ジャニー氏は、「僕はB面を頼んだつもりはないよ」と言ったとか(笑)。

近藤真彦さんや少年隊のデビュー曲も、筒美京平さんに何度も作り直させています。その代わり、完成度の高いデビュー曲が出せれば、あとはその路線に沿って、スタッフに任せてしまい最終ジャッジのみ――というのが、ジャニー氏のスタンスだったそうです。

ほかにジャニー氏のこだわりでいうと、バンドサウンド。まず、フォーリーブスのバックバンドを務めたハイソサエティーが生まれ、The Good-Bye、男闘呼組、TOKIOがこの系譜を継ぎ、バンド曲をレパートリーにするグループも複数あります。ジャニー氏は舞台への思い入れが強いですが、その音楽をジャニーズのバンドに演奏させるという構想もあったんじゃないかなという気がしています。

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