〈最終回〉陰謀論者の政党 当選者が続出

インターネットに蔓延り、人々を惑わす幾多の陰謀論の正体を、怪事解明ライターが紐解く――。

2023年統一地方選年表

2022年……7月10日、第26回参院選の投開票が行われる。参政党からは神谷宗幣氏が、N党からはガーシーこと東谷義和氏が当選する。

2023年……2月5日、投開票の愛知県知事選を前に、末永けい氏がディープステートや安倍元首相銃撃陰謀論を開陳するディープな政見放送を繰り広げ話題に。末永氏は県知事選では落選したものの、同年4月の県議選では陰謀論を封印したステルス戦略で当選。

4月、第20回統一地方選が9日の前半と23日の後半に分けて執行される。参政党は100議席獲得と健闘。政女党は1議席と惨敗する。

(絵/沖真秀)

2023年4月、全国で統一地方選が行われた。大量の泡沫候補が発生する統一地方選だけに、陰謀論ウォッチャーから注目される政党や候補も多く存在する。本稿では多くの議席を獲得し、存在感を見せた「参政党」を中心に選挙結果を見ていきたい。

以前、本連載でも扱った参政党は、さまざまな批判を浴びながらも候補者を集め、230名を擁立、100名を当選させた。昨年の参院選で国会議員が誕生したばかりの新興政党としては、健闘したといえるだろう。

とはいえ、参政党自身が打ち出していた「400人擁立、7割当選」という目標には大きく届かず、党の副代表兼事務局長の神谷宗幣氏は「60点」と評している。同氏は昨年参院選のマイク納め時には「1000人くらいの候補者を出す」と発言しており、これでもまだ控えめな数字に収めたほうだ。途方もない数字をぶち上げることによって党員を興奮させる手法を意図的に行っていると思われるが、結果が追いつかず、マイナスに働いている感がある。

100人当選は「躍進」に見えるが、当選率は4割3分にとどまり、都道府県別に見ると全敗している県も複数ある。さらに、個々の選挙結果を見ると、下位当選したり、最下位に滑り込んでいる議員が多い。定員の多い地方選挙だからこそ、当選できている面があるのは否めない。

そんな参政党からは今回も陰謀論界隈では注目の候補者が複数出ていた。まず、筆者が注目していたのが和歌山市議選の林元光広氏……というより、その妻の政子氏である。政子氏も参政党の和歌山支部長であり、夫婦で活動しているが、彼女は「大調和波動米」というものを販売し、一部で話題を呼んでいた。単にスピリチュアルな色付けをした米であればよくある話なのだが、話を聞いていくと、どうやら米と同時に仮想通貨を購入できるらしく、これが「米本位制コイン」と銘打たれているのである。年貢制度でも始める気なのだろうか?

また、参政党といえば「小麦ネタ【編注:参政党は小麦をGHQが持ち込んだものとして批判している】」だが、何を思ったのか、参政党の中でも特に小麦に批判的な吉野敏明氏が、「粉もん文化の中心地」大阪府知事選に立候補し落選。その一方で、ラーメン店を経営している候補も2名立候補していた。

昨年、参院選で「参政党なのにパン屋が出ている」と、ウォッチャーから突っ込まれていた渡辺知彦氏は、今回無所属で立候補していた一方で、参政党公認で選挙に出ていた、あるいは一時公認候補だったが取り消された「元参政党」勢も見られ、健闘している。急速に候補者を集めた副作用で、今後は参政党から政治の世界に入り、別の党にくら替えする議員も、出てくるのではないだろうか?

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