ラランド、蛙亭、納言…なぜ男女コンビは増えたのか? 女性芸人需要が高まるお笑い界で男女コンビが急増中!

――お笑い界では長らく、男女コンビは夫婦漫才以外は存在しなかった。それが近年、夫婦でもない男女がコンビを組むことが増加しており、賞レースやテレビで頭角を現すケースも出てきた。なぜ今、男女コンビは増えたのか? お笑い界のジェンダー変化を解き明かしていく。

◉男女コンビ見たけりゃ要チェック!
2023年お笑い男女コンビの現在地マップ
ひとくちに「男女コンビ」といってもその有り様はさまざま。ここでは、メディアやライブシーンで活躍する主だったコンビ・トリオをピックアップし、ネタ作りが男性主導か女性主導か、漫才メインかコントメインかという2軸でマトリクス化した。
※結成年/所属事務所/主な活躍

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近年、女性芸人の台頭が著しい。さほどお笑いに詳しくない人でも、そう言われたら頭に数人の存在は浮かぶはずだ。そしてこの地殻変動の裏側で、もうひとつお笑い界に定着しつつあるものがある。それが「男女コンビ」だ。思い浮かべた女性芸人の中にも、男女コンビの片割れが含まれているかもしれない。

ここでいう男女コンビは、恋愛あるいは家族関係になく、あくまで芸のために結成されているものを指す。実はこの形態の歴史は浅い。かつてお笑い界で「男女コンビ」といえば夫婦漫才が主であり、そうでない男女が継続的にコンビを組んでネタを披露することはほぼなかった。

ツービートや島田紳助・松本竜介などを輩出した1980年代の漫才ブームで名が知られるようになった男女コンビはいない。ダウンタウンやウッチャンナンチャン、とんねるずといった現在まで続くテレビバラエティ界の礎となったお笑い第三世代の頃は言うまでもないだろう。90年代に多くの人気芸人を生んだ『ボキャブラ天国』(フジテレビ)ブームでも同様だし、若手芸人の登竜門となった『爆笑オンエアバトル』(NHK)黎明期に刊行された同名の番組本(双葉社/00年)をめくってみても男女コンビはゼロ。同時期に大阪で盛り上がっていたbaseよしもとを特集したムック本『B面 baseよしもとofficial book』2冊(ぴあ関西支社/02年、03年)では合わせてもわずか1組。つまり、現在のような男女コンビは約20年前までほぼ存在しないに等しかったのだ。

当時を知る人の証言を聞いてみよう。『オンバト』常連であった「ホーム・チーム」(96年結成、10年解散)のツッコミで現在は脚本家・作家として活動する檜山豊さんは「当時は今のような男女コンビなんて、まったく存在しませんでした。いたのはベテランの夫婦漫才師の方たちだけです」という。

「男性芸人側には、女性芸人とコンビを組もうなんて発想もなかったです。というのも、とにかく若手芸人のアイドル人気がすごくて、いわゆる“ワーキャー”的な女性ファンに支えられている部分が大きかった。その中で女性芸人は男性芸人と近い距離にいるというだけでファンから嫉妬を買いやすい存在になってしまっていて、男女で組んでも人気が出ないことは明白でした。だからコンビを組むメリットがなかったんです」(檜山さん)

前提として、当時のお笑い界は今よりもはるかに男性優位の世界であり、芸人になろうという女性の数自体が圧倒的に少なかった。15年の『M-1グランプリ』ファイナリストであり、「新道竜巳の『女芸人研究室』」というブログも運営する「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳さんも、同様の印象を持っている。新道さんのデビューは98年だ。

「その頃、僕が活動していた範囲で男女コンビとは出会ったことがありません。そもそも女性芸人とライブで一緒になること自体ほとんどなかった。相当な才能と自信があるわずかな人だけだったと思います」(新道さん)

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