ある科学者は言う「気候危機に根拠はない」と。 ある投資家は言う「SDGsに逆張りしたほうが儲かる」と。彼らがいかに否定しようとも “グリーン経済”は大きく動き始めている。 世界で今、起こっているこのムーブメントの最前線をリポートする――。
最近、ネット上ではどこもかしこもチャットボット「ChatGPT」の話題でもちきりだ。まるで人間のように、アイデアを出したり、台本を考えたり、プログラムを書いてくれる人工知能に、世界ではもう大騒ぎが止まらない。
ところで、こうした人工知能を動かすためのエネルギーは、電力にほかならない。コンピュータチップは電力を「食べ物」にして、さまざまな計算を行い、サービスとなって届けられる。
プレステの美しい映像も、チャットボットが的確なレスをしてくれるのも、ツイッターで365日つぶやけるのも、そこには止まることのない電力供給があるからだ。
なぜそんな話をするかといえば、この人工知能の食べ物である電力を、どこまでグリーンに、サステナブルにできるかということを、いまシリコンバレーの企業が本気で取り組んでいるからだ。
私は最近、グーグルが進めている「インターネットをまるごと“脱炭素”する」という、壮大なプロジェクトを取材している。これは2020年秋、グーグルのCEOであるサンダー・ピチャイが、新しく掲げたことで公になったプロジェクトである。
これは、ちょっと前なら“無理ゲー”として、相手にもされなかったような話だ。なぜなら、グーグルが世界で運営するデータセンターは、とてつもない電力を「爆食い」するモンスターレベルのシステムだからだ。
実際に、グーグルが世界で運用しているデータセンターの電力消費量は、サンフランシスコ市(人口約90万人)まるごと2つ分とほぼ匹敵するといわれている。つまり約180万人分のエネルギーを、データセンターだけで丸呑みしている。
私たちが使っているグーグル検索も、Gメールも、グーグルマップも、YouTubeの動画も、すべてそこでまかなわれている。つまり10億人単位のユーザーが24時間使っている巨大サービスを、2030年までにまるごと脱炭素化するというのがこのプロジェクトの核心だ(現在のグーグルのデータセンターの脱炭素化率は、世界平均で60%台とされる)。
例えばグーグル検索なら1日85億回、毎秒9万9000回もの利用がある。雨の日も、風の日も、ノンストップでこの需要に応えないといけない。もちろんグーグルはビジネスで行っているため、その電力コストは非常に安価でなければいけない。
これを石油や石炭にまったく頼らず、実現しないといけないわけだ。私はグーグルのエネルギー部門のトップである、マイケル・テレルにインタビューをした。