インターネットに蔓延り、人々を惑わす幾多の陰謀論の正体を、怪事解明ライターが紐解く――。
1月9日……神真都Q第1回デモが開催される。
4月20日……ワクチン接種会場侵入により神真都Qリーダーのイチベイが逮捕される。
5月29日……スピリチュアルイベント「祭りっくす」が全国で行われる。
6月1日……「日本列島1000人プロジェクト」が初回活動を実施。
7月8日……安倍晋三銃撃事件が発生。スナイパー説や中国共産党黒幕説などの陰謀論が流行する。
7月10日……参政党が第26回参院選で1議席を獲得し、国政政党になる。
11月8日……生活保護費の不正受給により、イチベイと並んで神真都Qリーダーだった甲兄が逮捕される。
(絵/沖真秀)
2022年は「陰謀百鬼夜行」の年となった。年明け早々、1月9日にデモを始めた神真都Qは行動をエスカレートさせ、4月には逮捕者を出して大手メディアにもその名が掲載された。
同月からは「ユダヤ系を中心とした、国際金融資本が長年日本を狙ってきた」といった陰謀論的言説を展開する参政党が急速に党員を増やし、7月の参院選で議席を獲得。国政政党となった。
また、2020年の三浦春馬さんの死後発生していた、数々の陰謀論を信じる者たちもその勢いを増し、再捜査を求めるデモやチラシ配り会が、現在も全国で行われている。
さらに、三浦春馬さん陰謀論勢は、NHK党幹事長・黒川敦彦氏が主導した反統一教会デモにも合流した。このデモは反ワクチン団体や陰謀論系YouTuberも参加する闇鍋デモとなり、界隈では「渋谷事変」と呼ばれている。この場で黒川氏は「新しい国民の運動」という、主には緊急事態条項に反対する政治運動の発足を発表し、陰謀論で集まった人々を政治運動に引き込む動きが見られるようになった。
こうした陰謀論運動の特徴は、参加者のほとんどが政治活動に参加したことのなかった者たちということである。筆者は三浦春馬さんのデモの際に、参加者から「開催してくれる主催者が登場したので初めて参加した」という話を聞いた。
また、反ワクチン団体の活動が右翼や左翼の街宣と鉢合わせした場合、「本物」の勢いに押されてしまう光景も見られる。神真都Qの勢力は逮捕者が出た後一気に衰えた感があり、これも既存の右翼や左翼とは異なる。政治的なイデオロギーというよりは、ワクチンや三浦春馬さんの死など、個別の案件で「目覚めた」感覚で走っているという印象が強い。
陰謀論運動は、保守やリベラルと戦っているのではない。彼らが思う「真実」を隠している勢力と戦っているのである。したがって、社会の主流やエリートだと思えれば、右翼・左翼に関係なく攻撃する。左右対立ではなく、上下対立である。