家父長制という“伝統的家族観” 宗教がLGBTQを排斥する理由

――多くの宗教がタブー視する同性愛。今年6月には、「神道政治連盟国会議員懇談会」の総会でLGBTQへの差別的文言を含む文書が配布され、大きな批判を巻き起こした。続けて起こった旧統一教会をめぐる騒動から見えてきたのは、LGBTQやジェンダー平等を疎んじる宗教団体と自由民主党との蜜月関係だった。

“宗教とLGBTQの関係”と聞いて、両者が良好な関係にあると考える読者は多くないだろう。「サイゾー」では、2014年1月号にて三大宗教と同性愛のイビツな関係という記事で、三大宗教や新宗教と同性愛の関係を取り上げた。キリスト教、イスラム教、仏教をめぐっては、いずれを取り巻く環境にも同性愛の存在は散見されるものの、教義や戒律のレベルではタブーとされており、それは22年現在も大きくは変わっていない。

例えば、同性婚はキリスト教が主流の欧米でも広く認められ始めているが、21年3月、バチカンのローマ教皇庁は「カトリック教会は同性婚を祝福できない」とする公式見解を発表。前年に教皇フランシスコが同性愛者の事実婚を容認する姿勢を見せていただけに、このニュースは大きな物議を醸すこととなった。

宗教サイドのLGBTQとの向き合い方が問われる一方、社会においてLGBTQの権利保障の動きは着実な広がりを見せている。日本においても、パートナーシップ制度を導入する地方自治体の数は22年9月時点で232にまで上り、同性婚やトランスジェンダーの権利といった議論は社会的イシューとなっている。本稿では、世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)や神道政治連盟(以下、神政連)といった、近年の宗教及び関連組織とLGBTQをめぐる問題を見ながら、両者の関係について改めて考えていく。

LGBTQの権利保障が声高に叫ばれる中、大きく問題となったのが、今年6月に開かれた「神道政治連盟国会議員懇談会(以下、懇談会)」の総会における、性的マイノリティに対する差別的文書の配布だった。懇談会は、日本全国約8万社の神社を包括する神社本庁の政治部門・神政連と、260名以上の自民党を中心とした議員らからなる組織。この総会で配られた文書には、キリスト教学者の講演内容として「同性愛は心の中の問題であり、先天的なものではなく後天的な精神の障害、または依存症」「LGBTの自殺率が高いのは、社会の差別が原因ではなく、LGBTの人自身の悩みが自殺につながる」といった文言が並んでいた。すでに広く知られていることだが、世界保健機関(WHO)は30年以上前の1990年に同性愛を精神疾患の病理カテゴリから削除し、「同性愛は精神病ではない」と宣言している。

本件をスクープした一般社団法人fair代表理事でライターの松岡宗嗣氏は、この問題を振り返る。

「懇談会で配られた文書には、ほかにも『性的マイノリティのライフスタイルは家庭と社会を崩壊させる社会問題なので、正当化されるべきではない』『宗教的信仰や転向療法によって、性的指向は変えられる』といった趣旨の、性的マイノリティに対して人権侵害とも取れる言説が多く含まれていました。こうした文書が、政権与党である自民党議員が多数参加する議連で配られたということに強い憤りを感じました」

この問題が報じられるとすぐに、神政連などへの批判の声が数多く集まった。その後、松岡氏は自民党に対して冊子の内容を否定するよう求める署名活動を展開。署名はひと月足らずで5万筆以上にも上り、7月25日に自民党総裁の岸田文雄首相、懇談会で事務局長を務める城内実衆議院議員宛てに送付した。しかしその後、署名に対する自民党側からの反応はなかったという。なお、城内氏は今年8月に行われた自民党の「性的マイノリティに関する特命委員会」にて、LGBTQの差別解消に取り組む人々を「お花畑正義感の人たち」と揶揄したとされる(後に本人は、発言の趣旨が異なると否定している)。

実はこの署名、当初は同会の会長を務めていた故・安倍晋三氏に送付する予定だった。しかし、7月8日に銃撃事件が起こったため、署名の宛先は城内氏へと変更された。

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