日本好きの元ミシュランシェフが開発した「植物性アイスクリーム」が、全米で人気急上昇

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界でさまざまなテクノロジーが生み出され、デジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

今月のテクノロジー
Eclipse Foods(エクリプス・フーズ)

Eclipse Foods(エクリプス・フーズ)の公式HPより。

2019年に創業したフードテックベンチャー。デンプンと植物性タンパク質から100%植物由来のアイスクリームを作り、「牛乳を使ったアイスとまったく変わらない味」と評判に。安価でありながら、どこにでもあるデンプンを使っており、食糧安全保障の観点からも注目となっている。

アメリカ人は、異様にアイスクリームが好きだ。私が住んでいるサンフランシスコでも、暑い週末はもちろんのこと、夜であっても、冬であっても、人気店の前には長い行列ができる。

スーパーマーケットに行っても、売り場には誰もが知っているハーゲンダッツやベン&ジェリーズといったブランドから、地元産のマニアックな銘柄まで、大量にアイスクリームが売られている。

そして今、アメリカでは、ある「アイスクリームじゃないアイス」が注目を浴びている。それがEclipse(エクリプス)というブランドで売られている、豆やジャガイモなど植物性の素材から作られた、植物性アイスクリームだ。

ピンク色のパッケージがかわいい「クッキーバター」、緑色が涼しげな「ミントチップ」、トロピカルな風味の「マンゴーパッションフルーツ」に始まり、全米の有名シェフとコラボして、限定版のフレーバーも多数発売している。

値段は1パイント(約473ml)のカップで約5ドル(約660円)、その他のアイスクリームとほぼ変わらない価格帯だ。一方で原料に牛乳をまったく使っていないため、日本人に多い乳糖不耐症の人であっても、おなかがゴロゴロしない。

そんなアイスクリームを作っているのが、エクリプス・フーズだ。

2019年に生まれたばかりのフードテック企業だが、何が面白いかといえば、いわゆるシリコンバレーにたくさんあるソフトウェア系のスタートアップとは毛並みが違うことだ。

共同創業者CTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)のトーマス・ボーマンは、数々のミシュランの星付きレストランで働いてきた有名シェフだった。創作料理の世界で、その腕を振るってきたこの人物は2013年頃、ブラジルで開かれた食分野のカンファレンスに参加したときに、大きなショックを受けたのだという。

「アマゾンの森林が伐採され、地球が傷んでいるのは、あなたたちシェフが(最高級部位の)牛肉をメニュー表に載せているせいだ!!」

ある発表者が、壇上からそのように発言。実は牛肉や乳製品などを作る畜産酪農業が、ものすごい量の飼料や水などを浪費し、地球に大きな負荷をかけていることを初めて知ったという。それが、シェフだったトーマスが、新しい食品発明家のトーマスに生まれ変わるきっかけだった。

「そこで植物(野菜や穀物)に含まれているタンパク質について深く研究し、新しい食料生産システムを発明することに捧げようと決めた」(トーマス)

その後はイートジャスト(Eat Just)という、植物性の卵やマヨネーズなどを開発するシリコンバレーのスタートアップに、食品科学者として参加し、満を持して自らエクリプスを立ち上げたわけだ。

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