クラウドが社会を侵食する!? クラウドを知り、適応して生きねばならないこれからの日本

通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!

今やニュースでその文字を見ない日はないほど、社会の基盤になったクラウド。ひと口にクラウドと言っても、その中身とか使われ方は日々進化し、新たな技術が生まれたり、今まで使われなかった分野でも使われたりしている。気がつけばIT業界だけでなく、金融とか行政とか通信とかいろんなものがクラウド化して、クラウドだからこそ実現できるサービスも続々と生まれている。僕らの社会はクラウドによってどう変化するのだろうか。

[今月のゲスト]
玉置伸行(タマオキ ノブユキ)

日本仮想化技術株式会社 執行役員 エンタープライズクラウド事業部 部長。日本オラクル株式会社で新規事業開発やプリセールスを経て、2013年に日本仮想化技術に入社。


●クラウドサービスの利用状況

(出典)総務省「通信利用動向調査」

クロサカ 今月のゲストは、日本仮想化技術の玉置さんです。知る人ぞ知る、という同社ですが、NTTドコモをはじめとした通信キャリアのクラウド基盤構築を支援するなど、日本における大規模クラウド技術の最先端を進んでいます。そんな玉置さんとの対談は、当然ながらクラウドと通信の最新技術トレンドについて話しているので、全体を理解するにはある程度の知識が必要です。脚注でも補足はしますが、いつもよりちょっと難易度高めかもしれないことをご了承ください。そしてなぜこの対談でクラウドの話をするのかというと、そこからデジタルトランスフォーメーション(DX)がどうして必要なのか、DXを実現すると会社やビジネスがどう変わり、社会にどんな影響を及ぼすのか、というのが見えてくるからです。

玉置 クロサカさんとは20年くらい前から知り合いですよね。最初にお会いしたのは技術系の勉強会だったはずです。

クロサカ ミクシィが全盛期で、その中のコミュニティでもやりとりしていましたよね。フェイスブックもツイッターもまだなくて牧歌的な時代でした(笑)。その頃はオラクルにいらっしゃいましたけど、どんなお仕事をされていたんですか。

玉置 オラクルはデータベースの世界では最高峰の会社なんですが、僕はそこで新規事業開発をやっていました。僕の同期には前DeNA社長だった守安功さんがいたり、同じ事業部にLINE AIカンパニー社長の砂金信一郎さんがいたり、尖ったメンバーが揃っていたので、会社も何か新しいことをやらせてやろうと考えたんじゃないですか。それから、2013年に元同僚の宮原社長に誘われて、今は日本仮想化技術で新規事業開発をやっています。

クロサカ VMwareとかHyper-Vとかのサーバー仮想化技術【1】がひと通り完成して、もっといろんな領域に広がっていこうとするタイミングでしたよね。

玉置 はい。今の会社では、すでに通信事業者のクラウド基盤の開発を手がけていたので、その技術やノウハウを上手く横展開すれば新しいビジネスになるんじゃないかと考えていました。その頃から海外のカンファレンスに参加してNFV【2】SDN【3】OpenStack【4】について勉強したり、時には発表したりもしていましたね。

クロサカ 今でこそアマゾンやグーグル、マイクロソフトのパブリッククラウドを多くの企業が当たり前のように使っていますが、10年前はここまでクラウドが広がることは想像できませんでした。

玉置 そうですよね。特に変わったと思うのは、通信事業者のインフラでも仮想化技術を使うようになったところですね。規模に関しても、プライベートクラウドだと以前は多くて数十台のサーバーで構築していたのが、今では数千台の規模になっています。

クロサカ アマゾンやグーグルなら当たり前の規模ですが、日本企業でもそういう規模のクラウドを持つようになってきたんですね。

玉置 技術面での変化で一番大きいのは、コンテナ技術【5】の普及です。特に海外においてはすごく進んでいるんですが、日本ではビジネスレベルで見ている人が少ないのが不思議なくらいです。コンテナは、これからもっと大きくなって、ビジネスに大きなインパクトがあるはずです。

クロサカ 一方で、コンテナってどこか過渡期的な技術の気がするんですよね。

玉置 確かに、10年後もコンテナが主流かどうかはわからないですね。FaaS【6】サーバーレス【7】といったものも出てきているので、そちらのほうがメジャーになるかもしれない。ただ、コンテナというよりは、より大きな概念のクラウドネイティブな技術が当たり前になって、クラウドをいかに活用するのかという大きな流れになっていくと思います。

クロサカ そうか、コンテナって、自動車のプリウスみたいなものなのかな。プリウスが実現したストロングハイブリッドは、もともとBEVまでの過渡期のソリューションだといわれていました。でも、結果的にそれがずっと続いて20年以上たっている。そう考えると、過渡期の技術であるコンテナの時代がしばらくは続いてしまうかもしれない。ただ、FaaSとかサーバーレスといった「次のパラダイム」が出てきているのに、いまだに国内ではコンテナの話が一部の技術者の中だけに閉じてしまっている。

玉置 ほとんどの会社にとっては、国内でビジネスをやる上で、コンテナはそこまで必要じゃないからだと思います。ただし、金融分野だったり、一部の製造業だったりでは、コンテナベースでアプリケーションをつくるトレンドが来ているそうです。そうした分野では、コンテナを使うことが必要条件になってきていて、そうしないとソフトウェアを設計できないしエンジニアも雇えないという状況なんだとか。逆に、既存のシステムとか事業とかビジネスモデルをいかに流用するか、延命するかと考えている人にとっては、コンテナやサーバーレスは異世界の話なんだと思います。

クロサカ ひとつの会社であってもすべてをドラスティックに変えてしまうことはできないので、社内の中でも理解している人とそうでないところで、分断が起きてしまいそうですね。

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