データあれども活用できず、道路維持管理アプリを展開するスタートアップ経営者の苦悩とは?

通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!

2021年9月に鳴り物入りでスタートしたデジタル庁。DX推進の期待を一身に受けたものの、いろいろと苦労している様子。それでもコロナ禍での行政の感染症対策とか、企業のリモートワーク推進とか、明らかに以前よりはITに光明は差している。そんな日本で、道路の維持管理にデータ活用をひっさげて登場したスタートアップ企業「バンプレコーダー」。使命感に燃えて起業したものの、いろいろ苦労している様子。はてさて、その展望やいかに。

[今月のゲスト]
八木浩一(ヤギ コウイチ)

長岡技術科学大学を卒業後、トヨタ自動車を経て2013年10月にバンプレコーダーを創業。


●道路の老朽化について

○建設後50年を経過した橋梁の割合は、現在約25%だが、10年後には約50%に急増
○建設後50年を経過したトンネルの割合は、現在約20%だが、10年後には約34%に増加

(出典)国土交通省:道路を取り巻く状況より

クロサカ 今月のゲストは、バンプレコーダーという会社を経営されている、八木浩一さんです。八木さんは、もともと自動車メーカーに勤めていらして、それから起業されましたが、現在どんな事業をされているんですか。

八木 2013年10月に創業してから9年目になります。事業は、道路の舗装の維持管理に関する情報を自治体や舗装会社などに提供しています。どうやって情報を集めているかというと、スマートフォンに専用アプリを入れて道路を走ると、走行中の振動や位置情報を記録して、どこでどれだけ車が揺れたかという情報を集め、それをもとに路面のどこが傷んでいるのか、がわかります。以前から路面性状測定車という専用の車両があるのですが、自治体では自前で保有するには高価で、車両を保有している業者に委託して計測するため頻繁に計測できませんが、GPSや加速度センサー、ジャイロセンサー【1】が内蔵されたスマホで計測できるなら低コストで情報が収集できると考えました。基本的にお客様は自治体で、かなりニッチなビジネスです。

クロサカ スマホは最新のセンサーの塊ですから、そんなこともできるわけですね。同じくスマホをセンサーとして使った情報の活用というと、NTTドコモのモバイル空間統計【2】がありますが、あちらと違って「道路の維持管理」と用途が明確ですが、このアイデアはどうやって思いつかれたんですか。

八木 大学時代を新潟で過ごしたのですが、卒業してすでに新潟を離れていた2004年に中越地震が起きました。かつて自分が暮らしていた土地が被災したことにショックを受け、1週間ボランティアに出かけたんです。電車もバスも止まっていたのでクルマで向かったのですが、あちこちで道路が遮断されて通れない状況でした。インターネットはあったものの、リアルタイムで被害状況を知ることはできず、通行状況もわからない。だから、こうした情報をみんなでシェアすれば、防災に役立つのではないか、被災したところに集中して人員を割けるようになって、対応が早くなるのではないかと考えたんです。2007年の中越沖地震で柏崎が被害を受けたときにも、道路が被害を受けたのを見て、当時はまだスマホが普及していなかったので、趣味の電子工作を活かして振動を記録する簡単な装置を作って測ってみました。そうすると、地震の震度分布とは少し異なった、より道路被害の実態に近いであろうデータが取れたので、これは防災に役立つはずと強く思いました。ただ、防災に関することは簡単ではないですし、いつ起きるかわからないことでもあるので、ビジネスにしようとは考えていませんでした。

クロサカ まだ、IoTという言葉があまり知られていなかった頃ですよね。その時点で、ネットとデバイスでデータを収集しようというアイデアを思いついたのは、正に慧眼ですね。

今すぐ会員登録はこちらから

人気記事ランキング

2024.11.23 UP DATE

無料記事

もっと読む