年収の20倍もの持参金が必要 中国の結婚できない男たち

――国内の未婚率が上昇しているが、海外に目を向けてみると中国では「過去最大の独身ブーム」を迎えている。というのも、中国は女性に比べて、圧倒的に男性が余っているという事情があるからだ。日本ではいい年した独身男性は小馬鹿にされがちだが、一方でそんな状態の中国ではどうなのだろうか?

上海で行われたお見合いパーティの様子。手前のハートの風船がピンボケしている。(写真:Visual China Group via Getty Images/Visual China Group via Getty Images)

突然だが、「いつまでたっても独身のおじさん」に対して、あなたはどのような印象を抱くだろうか? 「そんなの別に個人の問題だし……」と思う人もいれば、「いい年こいて結婚していないということは、何かこの人自身に大きな欠陥があるのでは?」と疑う人もいるだろう。実際にツイッター上ではそういったおじさんのことを、「独身異常中年男性」などと呼んで揶揄する動きがある。

しかし、国立社会保障・人口問題研究所が発表している「人口統計資料集(2021年度)」によると、不詳補完値によって再計算した2020年の生涯未婚率は、男:28.3%、女:17.8%だったという。もはや、男の3人にひとりは生涯未婚という結果になる。ということは、例えば50代で未婚の男性がいたとしても、なんらおかしな話ではない。

それでも、「独身中年男性」を小馬鹿にする風潮は続いている。この現状について、独身研究家の荒川和久氏は、こう解説する。

「2010年に男性の50歳時の生涯未婚率が初めて20%を超えて、その辺りから『結婚しない男が増えてきた』という空気感が世の中に出てきました。『結婚しないのは本人に問題があるからだ!』という意見は、偏見そのものなのですが、どうも『独身男はイジってもいい』という風潮がありました。しかし、本来ならば、それはおかしなことです。そもそも、未婚というのは“選択的非婚”と“不本意未婚”という2つのタイプがありますが、前者はともかく、後者の不本意未婚の人が増えたのは本人の問題だけではありません。かつては、不本意未婚者の受け皿として、お見合いや職場結婚などの“社会的お膳立てシステム”が存在しました。しかし、現代ではそういったシステムが失われ、社会構造の問題であるともいえるわけです」

本当に結婚したい人がいる一方で、それを支える社会的な仕組みは廃れており、さらには“独身であること”そのものを揶揄される……。なんとも世知辛い世の中のようにも思えるが、最近はそういった“独身差別”の風潮も変わってきたという。

「私が独身研究を始めた2014年頃は、『独身男性は揶揄してもいいんだ』という空気感がありました。独身に関する私の記事に対して多くのコメントがつきましたが、その約8割が独身に対して『人は結婚して子を産み育てて一人前。みんなが未婚になったら国が滅びる』といった非難めいたことが書かれました。しかし、最近はファクト認識が広まったせいか、独身に対する否定的な意見も半分に減りました。それもそのはずで、2020年の男性の生涯未婚率が3割というだけではなく、大正時代から続く国勢調査によると15歳以上の総人口における独身人口が2020年には約5000万人、比率は44%となりました。もはや、日本人のほぼ半分は独身。そう考えれば、独身は絶対的マイノリティではなくなっているのです」

なにやら大きなパラダイムシフトが起きているようにも思えるが、荒川氏に言わせればそうではないという。

「独身が多いというのは、日本に限っていえば今に始まったことではありません。江戸時代だって独身は多かったわけですし、誰もが結婚する皆婚社会になったのは、明治民法施行後のたかだか100年くらい。長い歴史から見れば、異常なのはむしろ皆婚の方です。生涯未婚率というものが急上昇しだしたのは90年代からですが、それは90年代に50歳だった人たちの未婚率が急上昇したのであって、実際は65年に予兆は始まっているわけです。そして、65年に何が起きたかというと、お見合いの数が恋愛結婚に逆転された。つまり、 “社会的なお膳立て”が減った契機の年です。近年の未婚化を論じる際に、若者が草食化した等という価値観の問題よりも、こうした社会的結婚システムが失われた点を見逃してはいけません」

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