――人類とは旅する動物である――あの著名人を生み出したファミリーツリーの紆余曲折、ホモ・サピエンスのクレイジージャーニーを追う!
ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック
(絵/濱口健)1994年の解散までに経験したツアーは3本だけなのに、2008年の復活後はツアー激増、今年予定のものも含め9本! TLCやネリー、ボーイズIIメン、ノーティ・バイ・ネイチャーなど、ヒップホップ/R&Bアクトと組むことが多い。
コナン・ザ・バーバリアンのような、あるいは『エロイカより愛をこめて』のクラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハ少佐のような。マレットヘアを超えて後ろ髪が伸びすぎた黒髪おかっぱヘアの男と、80年代気分の仲間たちが登場するMV。それがニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックと気づいて、震えた。
曲は3月初頭に発表された「Bring Back The Time」。そのシーンは「Separate Ways」(1983年)の頃のジャーニーを模したものであり、件のおかっぱ男(ジョーダン・ナイト)はスティーヴ・ペリーに扮しているのだ。続いて、ディーヴォ、トーキング・ヘッズ、トゥイステッド・シスター、ロバート・パーマー、ビリー・アイドル、デュラン・デュランなどのMVを壮絶かつ破壊的に模倣していく彼ら。……ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックってこんな人たちだったっけ?
そんなニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック(以下、NKOTB)の出発点は、同郷の先輩グループの存在抜きには語れない。つまりニュー・エディションだ。
ボストンの黒人街からニュー・エディションを発掘したのは、ファンク・バンド出身のモーリス・スター。ソロアーティストに転身するも失敗、「これからはソングライト&プロデュースで身を立てよう」としていたマルチ・ミュージシャンである。才能豊かだが同時に仕切りたがりでクセが強い男を想像しておこう。ドケチぶりがたたってニュー・エディションから縁を切られたモーリスは、「ほな白人版ニュー・エディションを作ったるわい」と考えた。それも同じボストン市内で。まずは、当時15歳だったドニー・ウォールバーグのラップ・スキルを認めてスカウト。その弟のマーキー・マークも加わるがすぐ脱退(のちに俳優マーク・ウォールバーグに)、代わりにドニーは小学校時代からの友達であるジョーダン・ナイトとダニー・ウッドを呼ぶ。ジョーダンの兄、ジョナサン・ナイトも加入した。
だが、もともとニュー・エディションがジャクソン5の“新版”であり、NKOTBが「白人版ニュー・エディション」である以上、5人組でなければならないし、マイケル・ジャクソン的なシンガーが必要だ……そう考えたモーリス・スターはボストン市内の別地区で高い声の12歳、ジョーイ・マッキンタイアをフックアップ。85年末、こうしてラインナップが揃ったNKOTBはデビュー・アルバムのレコーディングを始める。が、86年春リリースのデビュー作『New Kids on the Block』のセールスは振るわず。その不振をうまく利用したのはNKOTBの面々だった。方向性や曲そのものについても発言するようになり、メンバーのうち3人が共同プロデューサーとしてクレジットされたのが88年のセカンド『Hangin' Tough』だ。ジョーイの高音歌唱が凄い「Please Don't Go Girl」や、ミネアポリス的な曲調の「You Got It (The Right Stuff)」といったシングル・ヒットもあり、アルバムは800万枚の特大セールスとなる。