スターリン、ゴルバチョフらと比較! 「最高指導者」プーチンの 歴史的な評価とは?

――ロシアのウクライナ侵攻。それを強行し、国際的な非難を浴びているプーチン大統領は今、世界一の悪人と呼べる存在かもしれない。戦場の惨状や現時点での彼の思惑については毎日あれこれ報じられているが、ソ連時代からの「最高指導者」たちと比べると、ロシア近現代史の中でプーチンはどんなリーダーといえるのか――。

写真/Getty Images、AFLO

2月24日、ロシアがウクライナに侵攻を開始した。ロシアはこれを「特別軍事作戦」と称するが、ウクライナと西側諸国からすれば「侵略」「戦争」でしかなく、指揮するプーチン【9】大統領は大悪人のように報じられている。その報道等の中で、彼はたびたびソ連時代の独裁者スターリン【2】に喩えられるが、それは適切な見立てなのか。ここでは、そのスターリンを含む歴代最高指導者と比較しながら、プーチンをロシア近現代史に位置づけたい。

大粛清のスターリンはナチスを倒した“英雄”

◉「つるつる」と「ふさふさ」のリーダーたち
ソ連・ロシアの歴代「最高指導者」
ソ連時代から今のロシアに至るまで、どんな人物がリーダーとなり、何を行ったのか。ざっとたどってみよう。
(写真/Getty Images)
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まず、プーチンとスターリンは似ているのか。『スターリン 「非道の独裁者」の実像』(中公新書)の著者で、慶應義塾大学の横手慎二名誉教授は「表面的には似ている部分もあるが、本質的にはまったく違う。しかし、プーチンは間違いなくスターリンを尊敬している」と話す。

「そもそもプーチンは、スターリンのようにトロツキーと共産党内での厳しい権力闘争に勝ってのし上がったのではなく、突然上から引っ張り上げられて指導者に。引っ張り上げたのは前任者エリツィン【8】で、その理由はKGB(ソ連国家保安委員会)出身のプーチンには忠誠心と愛国心があったから。でも、KGB時代の彼は中佐止まりで、帝王教育など受けていない。そんな男が権力を握ったとき、参考になるのは過去の指導者たちで、中でもスターリンは模範となった」(横手氏)

プーチンはスターリンの名前こそ出さないが、肯定的な文脈で、暗にスターリンについて語っているという。

「プーチンは、ロシアがかつて強大な外敵に打ち勝ったことを重視しています。『強大な外敵』とはナチスドイツであり、ナチスを倒したのはスターリン。我々にとっては大粛清と呼ばれる大弾圧を行い、農業集団化により数百万人の農民を死に追いやった極悪人ですが、大多数のロシア人にとってはヨーロッパをナチスから解放し、ソ連を超大国に押し上げた英雄で、プーチンにとってもそれは同じ」(同)

プーチンも、ウクライナ侵攻は同国を「非ナチ化」するためだと言っている。つまり、ウクライナはファシストに支配されているから、「兄貴分」のロシアが「解放」してやるのだと。また、武力の行使それ自体もスターリンの政策と重なる。

「ウクライナ侵攻にもっとも近いのは、ソ連・フィンランド戦争(1939~44年)でしょう。当時スターリンは、自国がヒトラーの脅威にさらされていたため、事前に戦略的に重要なポジションを確保すべくフィンランドに侵攻した。ウクライナにしても、特に14年にロシアがクリミアを奪ったのは、同地を押さえなければロシアの黒海艦隊が動けないから。いずれも大国であるソ連・ロシアの安全を確保するためには、小国を犠牲にしても構わないという身勝手な発想です」(同)

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