――海外では「SDGs」というワードはあまり見かけずに、先駆けの「アジェンダ21」やSDGsを包括する「2030アジェンダ」のほうが認知度はある。ただ、それらは真正面から取り上げられているのではなく、「人口調整」の文脈で陰謀論として消費されている……?
21年にニュージーランドで抗議活動をする、反アジェンダ21の陰謀論支持者たち。(写真/Lynn Grieveson – Newsroom/Newsroom via Getty Images)
2015年の国連サミットで採択されて以降、耳にタコができるほど喧伝されてきたSDGsという言葉は、すっかり国内では定着したように思える。しかし、こういった“きれいごと”にも見える取り組みが国際的な枠組みで推進されると、決まって湧いてくるのが陰謀論者たちだ。
「日本のネットの陰謀論界隈では今、SDGsで掲げられている17の目標を陰謀論的に解釈して『これがSDGsの真実だ!』と煽るフェイク画像が広く出回っています。悪の支配者……“ディープステート”や“カバル”など、いろいろな呼ばれ方をしていますが、彼らがSDGsを通じて世界の人口を削減し、強力な管理社会を作ろうとしているんだ、という話。古くから唱えられている新世界秩序陰謀論の焼き直しみたいなものです」
そう語るのは、『あなたを陰謀論者にする言葉』(フォレスト出版)の著者である、オカルト・スピリチュアル・悪徳商法研究家の雨宮純氏。同氏は続ける。
「例えば6番の『安全な水とトイレを世界中に』と7番の『エネルギーをみんなに、そしてクリーンに』は、『水やエネルギーが民営化され、新自由主義的な奴らに支配される』といった解釈をされています。3番の『すべての人に健康と福祉を』は注射の先端にドクロが描かれたものに置き換えられ『利益第一・医療製薬利権』とあります。これは明らかな反ワクチン思想で、新型コロナウイルスのワクチンも人口削減のための道具と見られているわけです」
また、このフェイク画像に加えて、「SDGsには隠された“18番目の目標”がある」という言説も広く流布されているという。
「その18番目の目標というのは『死ぬ権利、生まれる権利』というもので、具体的な内容は明示されていないのですが、要は生死も支配層に管理されるんだという話です。一体どこからこんな言説が生まれたかというと、元ネタは都市伝説芸人・関暁夫氏の著書です。彼の最新作『Mr.都市伝説・関暁夫の都市伝説7』(竹書房)は、都市伝説と言っておきながら陰謀論を取り扱ったものが多く、その内容を引用している人が非常に多い印象を受けます。例えば陰謀論界隈で有名なYouTuberのJOSTARも、自身の動画で例の“18番目の目標”の画像を使っていますね」(同)
使い古された陰謀論のパクリに加え、他人の著書からの引用……。ひと皮むいてみれば、なんとも穴だらけの言説にも見える。