海外ではワードが浸透していない 日本でSDGs一大ブームの理由

――一般的に認知や理解をされないまま、SDGsが取り上げられるようになったため、世間と実際にこの取り組みに携わっている者たちとの間で乖離があり、なんとなくでしかその実態を理解していない者も多いだろう。そこで、改めてこの一大ブームの基本的な情報をおさらいしていく。

近年、業界や業種を問わずさまざまな企業が「SDGs」に取り組み、各メディアで盛んに取り上げられている。

プレスリリース配信サービス「PR TIMES」では現在2万5000件近いSDGs関連リリースが引っかかるような状況だが、テレビなどで企業経営者や政治家の胸に光るSDGsバッジを目にするたび、言い知れぬ胡散臭さを感じてしまうきらいもある。

夫馬賢治氏の著書『超入門 カーボンニュートラル』(講談社)

そもそも「“持続可能な開発目標に向けた取り組み”とは結局、何を指すのか?」という素朴な疑問が、まずある。当然のことではあるが、環境や貧困、人権といった問題への取り組みには多くの人が共感するはず。しかし、SDGsの言葉には何の具体性もなく、マーケティング上の使い勝手が良すぎる点が気になる。

「これほどSDGsという言葉が社会全体に広く普及したのは日本だけです。アジア諸国を含めて、海外では『サステナビリティ』という言葉を使うことが圧倒的に多く、SDGsという言葉はほぼ浸透していません。各国のグーグルで検索すれば一目瞭然で、これは紛れもないファクトです」と語るのは、『超入門 カーボンニュートラル』(講談社)などの著書があり、サステナビリティ経営に詳しいニューラル代表取締役CEOの夫馬賢治氏。

SDGs(Sustainable Development Goals)は2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核となる指針だ。元をたどれば1992年の地球サミットで策定された「アジェンダ21(21世紀に向け持続可能な開発を実現するために各国および関係国際機関が実行すべき行動計画)」の後継という位置付けになる。

「10年以上前から欧米では企業経営や経済用語の文脈で、サステナビリティという言葉が頻繁に使われてきました。SDGsの提唱国は欧米などの先進国ではなく南米コロンビアで、発展途上国の課題を先進国と協力しながら解決していく意味合いがSDGsにはあります。ただ、SDGsという言葉ができる前からサステナビリティを重視してきた欧米企業にとって、SDGs的な取り組みは当時すでに企業活動の前提のような話のため、あえてSDGsという言葉が広まることもなかったんです」(同)

おなじみのSDGsの17の達成目標やロゴは、15年の国連におけるPRキャンペーンの一環で生まれたわけだが、18年頃からSDGsはここ日本で一大ムーブメントに発展する。

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