【田中雄士】遅咲きながらも成功者が求めたヒップホップという表現方法

――キックボクシングで世界を制覇し、実業家としても成功を収める男が次に着手したビジネスは“ヒップホップ・シンガー”というスタイルだった。

(写真/cherry chill will.)

今年7月にEP『遅咲きのヒーロー』でメジャーデビューを果たした田中雄士。アーティストとしてはまだまだ新人であるが、某有名チームの元リーダーとしてアウトロー界では知られた存在であり、キックボクシングの世界チャンピオン獲得、スポーツジムや飲食店、不動産事業など複数の会社を経営するビジネスマンという顔も持つ。高級腕時計を身にまといラグジュアリーカーを乗り回し、はたから見れば人生の成功者である彼が、40代を迎えてアーティストとしての道を選んだその理由は──。

「己の強さを証明するために、30代でキックボクシングのチャンピオンを目指しました。実際に王座を獲得してリスペクトは得られたけど、世間に対する影響力を考えると、こんなものなのかなと。カニエ・ウェストやジェイ・Zのような国全体に影響を与えるほどの発言力を持つアーティストを見ていて、やっぱりかっこいいし、彼らみたいな影響力が欲しいなって思ったんです」

もともと歌がうまく、目立つことも好きであったという。付き合いのあった雑誌編集長の助言にも後押しされ、アーティストとしての一歩を踏み出す。

「自分の経営しているキックボクシングジムに来ていた(シンガー・ソングライターの)CIMBAに話したら、『俺、曲作りますよ』って言ってくれたんです。そこで最初に自己紹介みたいな歌を作ろうって」

17年にインディでリリースされたデビュー作「遅咲きのヒーロー」には、30代でキックボクシングの世界チャンプになり、40過ぎにアーティストデビューした自身の姿を重ねる。

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