もはやカメラすら使わないことも“写真”を問い直す尖鋭的な写真集

――SNS上には“写真”があふれ返っている。かつてはカメラで撮って紙にプリントするものだったそれは、今やスマホさえあれば誰でも手軽に撮影でき、不特定多数に公開できるようになったからだろう。そんな時代に、「写真とは何か?」と問い直す表現者たちがいる。彼らの尖鋭的な写真集を開き、その新しいカタチを見てみよう。

フェデックスに割られたガラスの箱
【1】ワリード・ベシュティ
『Works in Exhibition 2011-2020』Walther König/2020年

米ロサンゼルスを拠点に活動するイギリス人アーティスト、ワリード・ベシュティは、情報の伝達や物の輸送に関わる人為的な影響に注目した作品で知られる。例えば作品《FedEx》では、国際的な輸送サービスであるフェデックス社が規定するダンボールサイズに合わせたガラスの箱を世界中に発送し、その過程で起こったひび割れなどをそのまま展示した。


紐型の痕跡をひたすらつける!
【2】セス・プライス
『Knots』Petzel/2018年

セス・プライスが2009年から13年にかけて制作した《Knot Paintings》シリーズを収録。作品は、このアーティストの特徴である真空成形技術で紐型の跡をつけ、アクリルや油彩、スプレーペイント、スクリーンプリント、注入樹脂、パターン生地などの絵画技術と融合させている。


同じイメージなのに印刷で違うものに
【3】ウェイド・ガイトン
『Wade Guyton』Les Presses du Réel/2019年

米作家のウェイド・ガイトンが大規模キュレーションプロジェクトのために制作した新作を収録。スタジオで撮影した写真をプリンターで出力したイメージが中心で、彼のプリンターは暗室での写真現像を機械的なプロセスに置き換えるために設計されているという。


コンクリートに転写して物質化
【4】滝沢 広
『The Scene (Berlin)』自費出版/2021年

滝沢が2020年に開催した個展をもとに作られた本書は、ベルリンの地下鉄の鏡に映った像と、同じ鏡の表面をスキャンして得た像を合わせた作品や、コピー用紙に定着した像とコンクリートの模様の関係性を示した作品を収録。展示風景の写真を背景に作品の図版が貼られ、より立体的に追体験可能。


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