──“YouTuber本”が売れまくっている。東海オンエア・てつやの自伝は10万部、コムドット・やまとの自伝は17万部を突破するなど、出版業界の新たなドル箱となってきた。このジャンルで存在感を示している出版社はKADOKAWAと宝島社。人気どころを押さえて売りまくる両社の仕掛け方とは──。
YouTuber本の“ニーズ”丸わかりマトリックス
数多くのYouTuber本を刊行する2社だけに、そのすべてを紹介することは紙幅の都合上不可能だが、
有名どころを中心にマッピング。それぞれの傾向が見えてくる──。
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書店の「エッセイ」の棚に足を運ぶと、今、あるジャンルの著者たちが人気を博していることがわかるYouTuberだ。しかもエッセイ棚に限ったことではない。写真集、ビジネス書、レシピ本……YouTuber本が平台を侵食している。テレビ、音楽、化粧品、おもちゃなどなど、さまざまな業界に進出するYouTuberたちにとって、出版業界も例外ではないようだ。
YouTuberの知名度を押し上げたCMキャンペーン「好きなことで、生きていく」が始まったのは2014年のこと。関連書籍が増え始めたのもこの前後だ。当時も今も代名詞的存在のHIKAKIN、『パズドラ』などの実況動画で一世を風靡したマックスむらい、元祖YouTuber的存在のMEGWINなどが自分の来歴やYouTuberという新しい職業について解説する本がちらほら現れてくる。
その後、はじめしゃちょーが主人公のマンガや写真集、女性YouTuber登録者数1位に君臨する木下ゆうかのフォトブック、東海オンエア・虫眼鏡による動画概要欄のテキストをまとめたエッセイ本、当時中高生に人気を博していたレイターズをモデルにしたライトノベルなど、多様化が進んでいった。
そこからさらにYouTuberの存在が世間になじんたこの数年、書籍の刊行点数は一気に増加。この種の本を手がけたことがある編集者A氏はこう語る。
「YouTuber本は売れ行きの予測が立てやすいんです。登録者数15〜20万人のチャンネルでも、『本が出ます!』と動画内で告知すればAmazon予約ランキングでベスト10以内に入ることはざらです。だから企画が通りやすいし、出して大幅にコケることもない。ありがたい存在なんです」
この流れを加速させているのが、KADOKAWAと宝島社だ。2020〜21年だけでKADOKAWAが33冊、宝島社が16冊、YouTubeでの活動をメインとする人物の本を刊行している(本誌編集部調べ)。これほどの数を出している版元はほかにない。そのラインナップを眺めてみると、両社それぞれの傾向が浮かび上がってくる。