過去はいつから歴史になるのか――。令和3年の今、早くも「平成史」とタイトルに冠した本は何冊も生まれている。
『平成史―昨日の世界のすべて』(與那覇潤/文藝春秋)
ノンフィクション作家で評論家の保阪正康氏による『平成史』(平凡社新書)は、平成は小選挙区制の導入によって政治が劣化した時代であると共に、阪神・淡路大震災と東日本大震災という2つの震災とオウム事件により、人々の心理が極めて動揺した時代だと論じる。
歴史社会学者・小熊英二氏編著による『平成史』(河出ブックス)は、財政社会学者の井手英策、教育社会学者の貴戸理恵、政治学者の菅原琢、政治社会学者の中澤秀雄、社会学者の仁平典宏、情報環境研究者の濱野智史、社会学者のハン・トンヒョンといった各氏が、それぞれ経済、教育、政治、社会保障、情報化、外国人といった各章を担当している。
『平成史』(小学館)は、作家の佐藤優氏と思想史研究者の片山杜秀氏の対談本。平成の31年をさらに数年ごとに分けて7章で論じ、大量の注釈や年表を並べるスタイルで流れを概観しやすい。
同じ片山氏の『平成精神史 天皇・災害・ナショナリズム』(幻冬舎新書)は、平成の間に蔓延した精神的退廃のありようを、シン・ゴジラや村上春樹を取り上げつつ、AIの進化が日本人に与える影響にも言及しながら論じる。
日本経済新聞編集委員の清水真人氏が書いた『平成デモクラシー史』(ちくま新書)は、政治改革や政党の合従連衡に踊らされた平成政治の変遷を振り返りながら、「平成デモクラシー」とは何だったのかを論じる。