――20年11月、NHK『クローズアップ現代＋』で放送された特番「追跡！あなたを狙う“闇バイト”」。SNSで募集される特殊詐欺の受け子や強盗などの実行役に若者が手を出すさまが映し出され、反響を呼んだ。このほか大学生の間ではバイナリーオプション詐欺やパパ活も横行しているとされるが、実際の学生に裏バイトの体験談を聞いた。

B君が所属していたバイナリーオプション詐欺業者の組織図を見せてくれた。まさしくマルチの構造といえよう。

　昨今、大学生の間で違法、または違法スレスレのバイトが横行していると各メディアが報じている。例えば闇バイト――特殊詐欺の受け子・出し子【1】、強盗、違法薬物の運び屋、口座売買、持続化給付金不正受給【2】がSNSで高収入の手軽な仕事として募集されており、コロナ禍による困窮から手を出す学生が増えているというが、当然これらは犯罪で、逮捕者が続出している。

　また、ハイリスク・ハイリターンの金融取引であるバイナリーオプション【3】が儲かる投資だと謳い、その投資学習ツールを入れたUSBメモリーを高額で売りつけるというものがある。友達を勧誘すると1人当たり6万円前後の報酬がもらえるが、そのUSBを使っても稼げないし、そもそも金融庁の登録をせずに金融商品取引勧誘を行うことは違法である。

　広く知られるようになったパパ活【4】も法的にはグレーだ。女子大生を含む若い女性がパパ＝年上男性と一緒に食事などをして金品を得るものとされるが、パパと肉体関係を持つケースも。その場合は売春防止法に抵触する恐れがある。

　こうしたバイト／仕事は本当に若者の身近にあるのか？　都内有名私立大学に通う学生たちに語ってもらった。

座談会参加者
A：男子2年生、工学部
B：男子4年生、経済学部
C：女子3年生、文学部
D：女子4年生、商学部

――みなさんはどんなバイトを、どのようなきっかけで始めたのでしょうか？

A　僕は家庭用蓄電池の訪問販売のインターンをやってました。友人の紹介です。そいつ、久しぶりに連絡したら自信満々な人間に変わっていて。「営業のインターンのおかげ」と言うんで、やってみるかと。あと、卒業後は高校の先生になりたくて、そこでコミュ力を身に付けたかったんです。

B　俺は、特定商取引法違反で一部業務停止命令が出たアイテックジャパンという業者のバイナリーオプション勧誘を1年続けた。きっかけは「スゴい投資家とつながった」という親友の誘いだった。渋谷の喫茶店で会ったアイテック取締役の福島裕基さんから53万7000円のUSB購入を勧められ、「クーリングオフできる16日間だけでも試してみたら？」と言われて。その後、近くで先に投資を始めた大学の先輩にばったり会って……実はそれも初めから仕組まれてたんだけど、先輩が「あのUSBのシステムはスゴいよ」と勧めるんで、貯金と学生ローンを合わせて買った。学生ローンは「USB購入」では組めないから、「『資格試験費用』ってことにすればいい」と先輩が教えてくれて20万ほど借りたね。

C　私はパパ活。もともと居酒屋のホールのバイトをやってたけど、全然稼げなくて。友達がパパ活をしていて、「私にもできそう」と思ったのがきっかけ。ひとり暮らしのためのお金が欲しかったの。

D　私もパパ活で、今は3年目。すぐやめちゃう子が多いからベテランの域だね。私、地方出身で家庭環境が複雑なうえに極貧で、子どもの頃から早く東京に出たいと思ってた。学費は奨学金に頼って、生活費は居酒屋のバイトで稼いでたけど、東京の私大ってお金持ちのお嬢様が多くて。しょっちゅうホテルのアフタヌーンティーやディズニーランドに誘われるし、見劣りしないように美容院は月イチ、マツエクやネイルにも気を使うから、お金はいくらあっても足りない。キャバクラもやってみたけど、昼夜逆転の生活がシンドくてパパ活に行き着いた。

C　私も家庭が複雑です……。