――昨年アカデミー賞で4部門受賞した『パラサイト 半地下の家族』など、韓国映画が世界で注目を集めている。その中でも、実際の凶悪事件をテーマにした作品は、大きなジャンルのひとつ。ポン・ジュノの『殺人の追憶』などは、日本でも人気となっているわけだが、本稿ではこのジャンルの映画をレビューしていく。
(絵/ミキタナカ)
2020年に作品賞などアカデミー賞4部門を受賞した『パラサイト 半地下の住人』に続き、今年も韓国映画界の躍進が続いている。4月25日(現地時間)に行われた第93回アカデミー賞では、米南部で懸命に生きる韓国系移民を描いた作品『ミナリ』での演技が高く評価され、女優ユン・ヨジョンが助演女優賞を受賞した。韓国人俳優として初めての快挙だ。BTSを筆頭に、いまやK-POPは世界のエンターテインメントシーンで重要な位置を占めるまでになったが、“K-MOVIE”もそれに続いて新たなポジションを確立していくのだろうか?
ところで、韓国映画といえばどんなジャンルがぱっと頭に思い浮かぶだろうか。日本では恋愛モノや青春モノ、家族映画といったヒューマンストーリーが特に人気を博している感がある。歴史作品や抽象度が高いアーティスティックな作品を好む視聴者もいることだろう。実際、いずれのジャンルにも傑作と呼ばれる作品が数多く存在している。
ただ、韓国映画の真骨頂といえば、やはり「犯罪映画」の存在を欠かすことはできない。圧倒的な暴力と狂気の表現は、日本映画やハリウッド映画のそれとはまた、異なる魅力を放ち続けている。
本稿では、韓国・犯罪映画のなかでもひと際独特な地位を築いている作品群に着目したい。それは、実際に起きた事件や実在の人物をベースにした、“リアル犯罪映画”の数々だ。